「Hiroshimaアートマネジメントラボラトリー 〜まちとアートの幸せな出会い〜」
講義編(平成20年6月6日(金)) / 実践編(平成20年7〜11月)
〔講義編〕
「“まち”にアートが効く」と言われ始めて久しく、今や全国各地でアートによるまちづくりの実践的な取り組みが行われています。広島県でも、平成18年10月に、広島県文化芸術振興のまちづくり推進条例が施行されました。果たして、アートは“まち”にどのような効果をもたらすのか? 数々のアートプロジェクトを手がけ、「“まち”にアートが効く」を実証する北川フラム氏、柳幸典氏を講師に招き、アートによるまちづくりの可能性や、その成功の秘訣を探りました。
T 日程
日時 平成20年6月6日(金)13時00分〜17時15分
場所 広島市まちづくり市民交流プラザ
6階マルチメディアスタジオ
プログラム
時間 |
内容 |
講師 |
13:00 |
オリエンテーション |
|
13:10 |
講義「アートの力 〜アートでまちは生き返る?〜」
アートによって生まれる新しい価値
アートが紡ぐ人の輪、賑い
アートは地域発展の活力源 |
広島市立大学芸術学部准教授
「旧中工場アートプロジェクト」総合ディレクター
柳 幸典 氏 |
広島県内の事例
・旧中工場アートプロジェクト(大学の立場から)
・みなとオアシス尾道(NPOの立場から)
・白市DNA(行政の立場から) |
NPO法人尾道てごう座理事長
田島 美鈴 氏
(財)東広島市教育文化振興事業団
吉野 健志 氏 |
15:00 |
休憩 |
15:10 〜 17:15 終了 |
「“まち”にアートが効く」先進事例の紹介
・越後妻有アートトリエンナーレ
・ファーレ立川
ディスカッション
アートによるまちづくり(地域の活性化)、その鍵を握るものは?
行政・文化施設等職員の役割は? |
女子美術大学美術学部教授
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」総合ディレクター
「ファーレ立川」アートプランナー
北川 フラム 氏 |
U 実施概要
1.講義「アートの力 〜アートでまちは生き返る?〜」
講師: 柳 幸典 氏
アートによる産業遺跡の再生 …… 地域の誇りの回復と再活性化を目指す
現代美術 …… 現代のもつ課題に取り組む
ホワイトキューブ(美術館)であれば世界中どこでも同じ。そこ(その地域)でしかできないことを考える
アーティストが関わることで、思わぬ発想が生まれる
アートが可能にすること
・産業のツメ跡が残された土地に再びアートとしての美しさを取り戻す
・全く違う視点から価値を見出す(新しい価値の付加・再発見)
・地域の誇りの焦点をつくりだす
海外の事情
犬島アートプロジェクトの事例
産業構造が転換する毎に、“つくっては壊し”ではなく、積み重ねていくことの重要性を提起
旧中工場アートプロジェクトの紹介
・旧中工場という場を最大限に利用(雰囲気や現状をそのまま利用する)
・美術の専門的鑑賞者ではない人たちに対してもわかりやすく、楽しめることを企画のミッションに据える
・前提を覆す(旧中工場という巨大な空間の中にとけ込み、肉眼では見つけにくい極小の作品を配置。鑑賞者は、作品を自分で探し出さなければならない。通常、美術展に行く時、見えることを期待し、それを前提に行く。その前提を覆した。また、“ゴミやホコリ”といった普通は汚いとされているもの、捨てられるべきものを、錬金術的に美術作品に変換)
・旧中工場周辺の吉島地域での展開
アートでまちを面白くする
地域の人々がアートを通して仲間になる
そこから、まちづくりへと繋がるのでは
2.県内の事例報告
「みなとオアシス尾道」の事例
講師: NPO法人尾道てごう座理事長 田島 美鈴 氏
県営の遊休倉庫の活用
・文化団体の練習会場として使用(無料)
・イベント利用(販売を伴う場合は有料)
・みなとオアシス尾道リレーイベントの実施
→ てごう座としては、リレーイベントの企画・運営を通して、この倉庫で何ができるのか、どのような使い方ができるのか、どういう人に使ってもらえるか等、アイデアを出していきたい
リレーイベント開催事業の紹介
何もない倉庫をどのようにイベント会場として設定しているか。コンサートや演劇公演等、事業の特性に基づいた活用事例の紹介
課題
・集客
・倉庫の運営をどのように採算ベースに乗せるか
・行政とどのように協働していくか
「白市DNA」の事例
講師:(財)東広島市教育文化事業団 吉野 健志 氏
経緯
白市という町が開かれて500年目という記念の年に当たり(1503年、白山城の築城)、記念イベントとして展覧会を開催(若手作家の発表の場としての位置づけも持つ)
コンセプト
白市の固有の景観・文化・歴史を、現代美術を通して見直す。人々の生活によって連綿と受け継がれてきた何かをDNAになぞらえる。
場の特質
単なる野外展ではなく、500年という古い歴史を持つ白市という町を主題に、歴史をふまえた作品の展示
→ そのような作品を展示することで、場のもつ意味が浮き上がってくる。地域の人たちがまちの歴史や特質を再確認できた。
地域住民・ボランティア
・説明ボランティア(町の歴史と作品の解説を行う)…… 市内外からの応募
・監視ボランティア …… 主に地域の人
・子どもも参加できるプログラムの実施
課題
・継続性
(行政は同じことを同じ場所ですることは難しいため、東広島市内の各地域を巡回する形で3年毎に実施している。しかし、1年ではまちの活性化というところまでは繋がりにくい。1年では人も育ちにくい)
3.講義「“まち”にアートが効く」(先進事例の紹介)
講師 北川 フラム 氏
まち全体が美術館 −東京都立川市の事例
コンセプト
「世界を映す街」「機能(ファンクション)を美術(フィクション)に!」「驚きと発見の街」
考え方が違う、異なる民族に出自をもつ、36ヶ国92人のアーティストが参加
設備的機能をアート化する
(排気口、街灯、看板、車止め、建物のデッドスペース、建物と建物の隙間、……等)
新しいコミュニティ活動「FARET CLUBファーレクラブ」
・女性中心のボランティアグループ
・活動 …… 案内(アートツアー)、清掃
アートに親しむワークショップ
・アートピクニック
… ワークショップで描いた旗のもとで、オリジナルの運動会種目のほか、国際色豊かなダンスや仮装行列を楽しむ
⇒ アートが人と人とを繋げる。人と場所とを繋げる
代官山同潤会アパートの事例 −地域の過去・現在・未来を見直す
代官山ステキ発見「フォトコンテスト」
さよなら同潤会アパート展 …… 代官山アパートでのインスタレーション展
代官山アドレスの誕生(まちの新ステージ)
・街の顔を作る
・防災時の非常用品が格納されている倉庫をベンチに
新潟県・越後妻有アートトリエンナーレの事例
・高齢化・過疎化が進む豪雪地帯 …… 760km2の土地に330を超えるアート
・地域の人々が、自分たちの暮す地域の生活に誇りをもつことが重要
・アーティストが里山に流れる生活と時間を形象化
・廃校・廃屋等捨てられていく社会資産を徹底的に活用
・最初は、大きな反対があった。しかし、地域の人たちも一度参加したら我が事のように話し出した。何もないところにみんなが関わって育てていく。それがアートの力
・都会の人たちも手伝っている(首都圏の学生を中心とする「こへび隊」等)
瀬戸内国際芸術祭の紹介
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