T 日程
日時 平成19年9月18日(火)、19日(水)
場所 広島市まちづくり市民交流プラザ 北棟5階 研修室A・B
9月18日(火)
時間 |
内容 |
講師 |
9:50 |
オリエンテーション |
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10:00 〜 11:30 |
講義「社会関係資本と、市民・芸術の幸せな関係」
取手アートプロジェクト〜市民・大学・行政のパートナーシップの事例 など |
□講師
東京芸術大学/准教授
熊倉 純子 氏 |
11:30 〜 14:30 |
グループワーク(1)
グループワークの説明とグループ分け
※事前に、参加者に対し関心のあるテーマを尋ね、それに基づいたテーマ設定を行う。 |
□コーディネーター
東京芸術大学/准教授
熊倉 純子 氏
□ファシリテーター
熊倉研究室&TAPスタッフ |
グループワーク(2)
各グループのテーマに基づき、広島の現状と課題について意見を出し合った。各グループにファシリテーターが付き、コーディネーターもグループを回ってディスカッションに参加した。 |
プレゼンテーション(1)
事例報告の前に、各グループが抽出した現状と課題を全体で共有した。
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14:30 〜 16:30 |
ケーススタディ(1) 〜他地域の事例から学ぼう〜
人・お金・場を活かした地域文化活性化の事例を紹介
地域文化活性化の秘訣を探る!
・山口情報芸術センター
・小出郷文化会館 |
□先進事例報告者
・山口情報芸術センターエデュケーター
会田 大也 氏
・小出郷文化会館館長
櫻井 俊幸 氏
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16:40 〜 18:30 終了 |
グループワーク(3)
事例報告を受けて、再度、広島の現状と課題を検討し、グループごとに打開策の方向性やヴィジョンを話し合った。グループの要請を受けて、アドバイザーやコーディネーターがディスカッションに加わった。 |
□コーディネーター
・東京芸術大学/准教授
熊倉 純子 氏
□アドバイザー
・小出郷文化会館館長
櫻井 俊幸 氏
・山口情報芸術センターエデュケーター
会田 大也 氏 |
プレゼンテーション(2)
打開策の方向性やヴィジョンを共有し、アドバイザーを含めて全体でまとめのディスカッションを行った。 |
9月19日(水)
時間 |
内容 |
講師 |
9:30 〜 11:30 |
講義「地域文化デザイン 〜アートパワーをどう育むか」
指定管理者制度は官民のパートナーシップを導き、同時に文化政策は厳しい評価にさらされることになる。 |
□講師
東京芸術大学/准教授
熊倉 純子 氏 |
11:15 〜 14:30 |
グループワーク(4)
前日に決めた打開策の方向性やヴィジョンを具体的なアクションプランに落とし込んだ。コーディネーターとアドバイザーが各グループを回って、アドバイスした。 |
□コーディネーター
東京芸術大学/教授
熊倉 純子 氏
□アドバイザー
小出郷文化会館館長
櫻井 俊幸 氏
□ファシリテーター
熊倉研究室&TAPスタッフ |
14:30 〜 16:30 終了 |
プレゼンテーション(3)
グループごとにアクションプランを発表
全体ディスカッションと講評 |
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※TAPとは、「取手アートプロジェクト」の略
U 実施概要
1.講義「社会関係資本と市民・芸術の幸せな関係」
講師: 熊倉 純子 氏
第1日目 講義
取手アートプロジェクトの事例を検証
市民と行政と大学のパートナーシップ
組織 … 実行委員会形式(行政・大学・市民が入る。約60人が関与)
市民の参画に多様な類型を考案(チーフインターン・インターン・サポーター・TAPエンジェル等)
↓
個々のニーズ及び特性にあった参画が可能。
特に、TAP塾という研修プログラムを設けたことで、市内外から意欲のある若者を惹きつけることができた。
主要事業
・オープンスタジオ(アーティストのアトリエ公開)
・公募展
・芸術環境整備事業(一般の人にも関心をもってもらう。芸術の鑑賞者や理解者を増やす)
子どもプログラムの実施(児童画展、アーティストの学校派遣)
TAPサテライトギャラリー
壁画プロジェクト(市民のアート活動への参加)
人材育成プログラムの実施(TAP塾)
TAP塾について
・実践型研修プログラム
(講義を受講するほか、TAPの運営、キュレーション・ワークショップ等の実施を通じて、アートマネージャーとしてのノウハウを習得)
・受講生の活動内容
アドミニストレーション業務(会計・財務)
企画業務(企画選定にも参加してもらう。企画のミッションから語り合い、共有化)
情報発信業務
TAPによる“まち”へのアプローチ
・市内の人的芸術文化資源の掘り起こし
アーティスト・アートマネージャー(スタッフ)・サポーター・来場者 など
様々な団体に呼びかける(町内会等)
・市内商店街や遊休施設の活用・公開
ネットワークの結節点
市外からTAP塾に集まった若者たちが、シニア層・主婦層を中心とした在住のサポーターとともにハブとなり、地域に関係性を拡大(“しがらみ”をつくっていく)
↓
芸術による社会関係資本の増大
2.先進事例報告
「山口情報芸術センターの事例」
講師: 会田 大也 氏
教育普及の最大のミッションは何か?
ユーザーをつくること(館に足を運ぶ人を増やす)
→ 受動的なユーザーでよいのか?
ユーザー自体のクリエイティビティをあげる
↓
“ひと”が面白くなる
↓
“まち”が変わる
教育普及事業の投資効果
・長期的投資(学校へのアウトリーチ等)
・短期的投資(ワークショップ等のアクティビティの実施等)
山口情報芸術センターの教育普及事業事例
・バックステージツアー、ギャラリーツアー、YCAM茶話会、子ども向けワークショップ等
・子ども向けワークショップでは、作品解説は極力避け、観賞前の言わばストレッチ的なものを実施(観賞のための感受性をアップ)
・参加の多様なチャネルを設ける(内容の深いもの、浅いもの等)
・できる限り公開のスペースで実施
課題
教育普及事業の成果をどのように客観的に評価していくか
→ ユーザーの変化を統計化するようなことも考えている
長期ビジョンの重要性
何のための教育普及か 先々どういう市民をつくっていきたいのか
↓
長期的なビジョン・戦略をもって実施することが重要
小出郷文化会館の事例
講師: 櫻井 俊幸 氏
魚沼市概説
小出郷文化会館誕生秘話
・地域住民による「小出郷文化会館建設基本構想」の提言
・市民館長の誕生
住民による協力
応援組織の結成
(魚沼市の人口の1割近く《4,000人以上》がボランティアとして館の運営にかかわっている)
ステージスタッフ(有償ボランティア)
サポーターズクラブ(資金提供)
友の会(事業のある時に特設の喫茶店を開く等)
住民プロデューサー(住民企画の実施)
企画運営委員会(審査・事業評価等)
自主事業の3本柱
・アウトリーチプログラム … 合併後、エリアが広域化したこともあり、アウトリーチに力を入れる
・セミナー系プログラム(クリニック等) … 地元文化団体や次世代を担う若者を支援
・住民連携プログラム … 地元住民や行政との協働による事業の実施
※「人を大事にする」「教育普及に重点」「拠点ということを強く意識」
何よりも館のミッションがはっきりしていることが大事
3.グループワーク
講師・コーディネーター: 熊倉 純子 氏
アドバイザー: 櫻井 俊幸 氏
ファシリテーター: 熊倉研究室及びTAPスタッフ
受講者は、各自の趣味や問題意識に基づき、下記の5テーマから1つを選び、グループに分かれた(5グループを結成)。
1班 ミッションづくり(指定管理者制度と評価の問題を含む)
2班 観客との関係づくり(アウトリーチの課題を含む)
3班 市民との関係づくり(市民参加の課題を含む)
4班 ネットワークづくり(他館・エリア・NPO等とのネットワーク、また役割分担)
5班 資金調達(助成金、企業メセナ、寄附、予算配分等)
上記テーマについてグループごとに話し合い、まず広島における現状と課題を洗い出した。次に、解決の方向性について考え、最後に、解決のためのアクションプランを作成した。この一連のグループワークを2日間にわたり行った。
1班 ミッションづくり
課題
ミッションがない(政策ミッションがないままに、財団が事業を行っている)
↓
評価できない
↓
定めなければならない。
解決のための方策
ミッションの逆提案(事業からミッションを考える)
↓
アクションプランを作成
2班 観客との関係づくり
課題
何のためのアウトリーチか(各自がもつアウトリーチに対するイメージが異なる)
広島は100万都市。個別に実施するアウトリーチプログラムでは効果がでにくい。
↓
つなげることの大切さ。続いていくサイクルをどうつくるか。(ネットワークとも密接な関係)
解決のための方策
アウトリーチのミッションを創客とし、「10年後の観客を倍増」するためのアクションプランを作成。
3班 市民との関係づくり(市民参加について)
課題
参加者の意識がバラバラ。受入側の目的もはっきりしていない。行政が予算を手放さない。
市民の意見をどこまで受け入れられるのか。(どのようにセーフティネットをはるか)
解決のための方策
市民参加のミッションを「住民が足を運ぶ施設になること」と定め、アクションプランを作成。
4班 ネットワークづくり
課題
事業の展開性・継続性確保のためには、ネットワークの形成が鍵となる。しかし、地域の枠をどう考えるか。人とどのようにつながるのか。
解決のための方策
いかに多くのものさしを持てるかが鍵。「地域内ネットワークづくりに向けて」のアクションプランを作成。
5班 資金調達
課題
資金調達の方策の洗い出し。助成金は単年度のものが多い。
↓
“まち”に根付いた事業を行うことで、企業・団体からの寄附を増やす
地方公共団体からの補助金が減少する方向。しかし、事業は行わなければならない。
予算が少なくなればなるほど、ミッションが重要。(どこに、どのように使うか)
解決のための方策
資金調達のために、今後は“まち”に有益な事業を行うことが重要。
↓
文化のまちづくりに貢献するためのアクションプランを南区を事例に作成。
4.講義「地域文化デザイン 〜アートパワーをどう育むか〜」
講師: 熊倉 純子 氏
第2日目 講義
指定管理者制度と評価を中心に講義
テキスト
『公立文化施設における政策評価等のあり方に関する調査研究 公立ホール・公立劇場の評価指針』(財団法人地域創造、平成19年3月)
『公立文化施設における政策評価等のあり方に関する調査研究 公立ホール・公立劇場の評価指針(簡略版)』(財団法人地域創造、平成19年3月)
評価の求められる背景
行政・文化施設を取り巻く環境の変化について説明
政策評価の目的
評価自体が目的化するのは危険
→ 問題点・課題の把握と改善策の検討
住民に対する説明責任への対応
評価の前提条件
・数だけの評価に特化しないためにも、政策評価、ミッションの設定、それに基づいた評価結果の公表が重要
・アウトプットだけではなく、アウトカム(波及効果)が重要
→ 地域や住民の生活がどう変化したか。地域や住民に対する幅広い効果を視野に入れた評価が必要
・定性的な部分を自己点検できる仕組の確立
地域創造の評価指標の用い方
行政の文化政策の変遷
文化政策に求められていること
・政策全体における位置づけの明確化
・地域文化振興の中長期ビジョンの策定
・複数の選択肢を示せる専門性の強化(継続的な情報収集とその分析能力)
・地域文化全体をプロデュースできる機関・人材の必要性
文化以外の社会領域との連携の構築
民間との連携の構築
域外とのネットワークの構築とその活用
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