けんみん文化祭ひろしま'21文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'21文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】新宅道和 選

【短歌】新宅道和 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
息を吐き大筆持って一画目白い世界を黒で彩る 呉市立呉高等学校一年 平岡 麗菜
【評】書道を動きのある言葉で描写した。四句五句の「白い世界を黒で彩る」という表現、意外性があって面白い。
手渡しでおつりをもらうありがたさ初めて知った十五の私 呉市立呉高等学校二年 熊谷 空海
【評】二年前は手渡しが普通であったおつりは、今トレーに置いて渡される。釣銭に着目した十五歳の記念碑的社会詠。
ひなんした車でねむるはじめてだ雨音こわいがおやすみなさい 三次市立八次小学校二年 道木 瑠菜
【評】普通なら子どもにとって楽しいはずの車で眠るという非日常体験も、大雨での避難で怖かったのを上手に詠んだ。
あつくても屋根ではたらくお父さん帰ってきたらびしょびしょだ 庄原市立東小学校三年 中野 遼一
【評】働くお父さんを詠んだ。感情を表す言葉は使わなくても、尊敬が伝わってくる。結句の字足らずが惜しかった。
蜘蛛の巣に原石かけて雨が去る日が顔出せば宝石輝く 東広島市立向陽中学校二年 中M 久遠
【評】蜘蛛の巣にかかった雨粒が宝石のようにきれいだったのを見て、想像力を働かせて詠んだ短歌。観察眼に脱帽。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
まだ暑い晩夏の空に星一つ街のネオンに埋もれず光る 比治山女子中学校一年 笠井 睦月
海の青に誘われた僕を海鳥は嘲って橙の空を纏った 県立府中高等学校二年 山下 麗奈
炎天下女子の味方の日焼け止めどうして効かぬ私にだけは 呉市立呉高等学校三年 井田 万葉
カーラジオ眠気を覚ます子の誓い背筋が伸びる知らず知らずに 県立尾道北高等学校一年 末次 智葉
昼ごはんさすがに飽きた冷や麦もピンク色だとテンション上がる 呉市立呉高等学校三年 奥野 涼音
パッと合う視線をそらす廊下にてすれ違う君の上履きの色 広島市立三和中学校二年 對馬 園実
ゆれる髪束ねる君の首すじを汗がつたうと胸がときめく 呉市立呉高等学校一年 山ア 百花
夏祭り浴衣姿に照れるキミ「かわいい」くらい言ってほしいな 呉市立呉高等学校一年 今田 桃子
奈良に行き大仏を見る我と友母のカメラがカシャリと鳴った 呉市立川尻中学校二年 村中 秋穂
弟とけんかする度言い放つもう遊ばないはもって半日 庄原市立東小学校六年 岩ア  湊
母さんの帰りを待つのくたびれたとなりの妹うとうとしだす 庄原市立高野小学校六年 中山 裕貴
ちゃあちゃんとかわいくよぶよぼくのことしゃべりはじめたいもうと一さい 庄原市立東小学校二年 吉岡 俊哉
いもうとがちらかしたのにおこられていつもぼくだけかたづけている 庄原市立東小学校二年 柳生 謙心
ひいばあちゃん大きくなったぼくを見てぶつ間の写真に発表会だ 庄原市立東小学校三年 大段 蓮虎
雨が降り今年の七夕会えないね一人眺める鳴らないスマホ 県立広島皆実高等学校二年 山中 遥奈
夏休みまだ休みたい夏休みあと三日もてせんこう花火 広島市立三和中学校二年 佐々木竜聖
もう五時か胸にぽっかり穴があく空から聞こえる夕焼け小焼け 県立広島中央特別支援学校高等部一年 金猪リ 希
「君らしく」「君ならできる」「頑張って」僕の為だと君は言うけど 県立三原高等学校一年 堀 日菜子
へびがいた茶色で長い動かない死体みたいでどきどきしたよ 庄原市立高野小学校二年 井上 大愛
水でっぽう空にむかってとばしたよぼくにかかってふくぬれちゃった 庄原市立東小学校二年 山王 陽翔

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
生かされるだけで水さえ飲めぬのに延命措置の苦を叫びたい 江田島市 住田 照水
【評】ALS患者嘱託殺人事件を思い出す。作者は代筆してもらったのだろう。心の叫びが定型に乗って伝わってくる。
「まあ、わたしもう八十才」ワクチンの接種票手に呟きおりぬ 福山市 金尾 洵子
【評】「まあ、わたし・・」が歌を明るくしている。暗くなりがちな題材だが、これでワクチンもよく効いたはず。
記録的豪雨のつづく広島を呼吸忘れてテレビに見入る 三次市 林  敏明
【評】二〇一四、二〇一八、そして今年広島は相次いで豪雨災害に見舞われた。「呼吸忘れて」が効いている。
病む妻の浴後の着衣の難しく叱りつけたり共に泣きたり 三次市 中久保四郎
【評】老々介護の厳しさを詠った。四句五句から辛い中での愛情の存在が感じられる。介護の短歌を詠み続けてほしい。
コンベアーに乗りたるように粛々とコロナワクチン接種受けたり 安芸高田市 井上  愛
【評】コロナ禍もワクチンのおかげでやや冷静に語られるようになった現在を特徴的に詠んだ短歌。「粛々と」が効いている。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
父祖の山知りつくしたる夫と佇ち砂防現場を飽かず眺むる 広島市 大東 敬子
お隣りの木犀の香が垣越えて今日一番の幸せ運ぶ 広島市 羽城 裕子
背を押すは茅花流しか 人影の無くばはずさんマスクの枷を 広島市 岩本 幸久
廃校の跡の更地に小さき碑敷地寄付者の名前留めて 安芸郡府中町 石橋 康徳
誉められてまた誉められてスケボーを幼は空をものともせずに 福山市 橋 泰子
佇みて耳そばだつる虫時雨通り過ぎゆくイヤホンの群れ 広島市 土居 直子
高原のキャンパスに立つシンボルの銀杏が水面に映える夕暮れ 庄原市 麻生多嘉子
たんぽぽもしろつめ草も道端のここに根を張る権利をもちて 尾道市 新川 政子
通り雨ようこそ庭へ南天にハグロトンボが宿っています 府中市 山本 友栄
「帰りたい」願い虚しく旅立ちぬ九十四年の母の人生 安芸高田市 藤井美智子
広島の近場にあるも荒山か岨道続く核禁条約 広島市 日野 幸吉
土管から得意満面のマリオ出で制御下と云いし列島の今 三次市 礒井ふみ子
何食べる?毎日聞きし合言葉何でもいいよと呪文の返事 呉市 原田寿美子
ひたすらに筆持つことをリハビリと稽古せし書が特選となる 広島市 長尾 裕子
白きシャツ白く洗いて青空そらに乾す独居の老爺今日も健在 尾道市 藤田 久美
添い寝するじいちゃん先に鼾かき笑った孫もへそ出し眠る 呉市 大森 篤子
ふもとより手を合わせたる山の墓われも老いたり許せ父母 呉市 芳野 幸忠
一、二、三と声張りあげるリハビリの窓に優しき冬の日射しは 三原市 豊原 國夫
旧友は各駅停車でゆけという病癒えたる我へのメール 廿日市市 東 知佳子
朝な夕な試歩ひたすらの冬耐えて妻は果樹園の陽だまりに立つ 尾道市 仲尾  修