けんみん文化祭ひろしま'19文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'19文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】香川哲三 選

【短歌】香川哲三 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
ハンバーグ母といっしょにはしならべ父の帰りを待つ金曜日 庄原市立庄原中学校三年 三村百合香
【評】なんでもないような日常生活の一齣を通して、小さな家族の温かな雰囲気、人の心の優しさが伝わってくる。
じりじりと燃えてく心と焼ける肌ラケット片手に勝負を挑む 県立三原高等学校二年 芦田 凜子
【評】何の競技かなど具体的なことは言っていないが、言葉に張りがあり、試合に臨む生徒の情熱が伝わってくる。
つながれた手のぬくもりが優しくて微笑む姉と涙の私 庄原市立庄原中学校二年 原田日向花
【評】姉の所作を述べた言葉には作者の心が通っており、事情が省略された結句も一首全体に働いていて、心が動かされる。
負けた時「ごめんね」という監督の言葉にあふれる大粒涙 三次市立塩町中学校二年 有田 涼寧
【評】とある競技で敗者になったその時に、監督が生徒に謝ったという、それに対する生徒の涙、何れも感動的である。
もういない父の背中を覚い出し手で消していく涙の形 県立尾道北高等学校一年 西岡 咲華
【評】一読して心打たれる作品だ。取分け下句に表された作者のかすかな行為には、言いがたい哀しみが漂っている。私は「覚い」を「おもい」と受け止めたが、そうした課題を上回る内容がある。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
夏祭り友と遊べる最後の日無言で見上げた打ち上げ花火 県立三原高等学校一年 上  睦稀
児童会みんなで折った千羽づる平和な世界に祈りをこめて 庄原市立東小学校六年 松島 悠希
窓辺からのぞくと見える夜の街明日を思えばひとみがゆれる 広島市立牛田中学校二年 藤  菜月
六月だつゆがもうすぐくるんだな家のアジサイさくのをまつよ 尾道市立向東小学校五年 栗屋 健琉
しょうがっこういつもせんせいわらってるたのしいがっこうだいすきなんだ 庄原市立比和小学校一年 橘  咲菜
里帰りやっぱり落ち着く祖母の家祖母の手料理畳のにおい 県立三原高等学校二年 中野 優衣
懸命に鳴らし続けるトロンボーンそれでも遠い中国大会 呉市立呉高等学校一年 中上 花菜
亡き友とかつて遊んだ廃校舎おとずれみれば彼岸花咲く 県立三原高等学校二年 佐藤 英斗
お帰りとその一言が言いたくて無人のホームでただ君を待つ 県立尾道北高等学校一年 薄墨 七佳
AIが仕事を奪う世の中で自分が生きる意味を見つける 広島市立大州中学校二年 巴山 亜蓮
いのししがあらした庭を眺めつつ「むかしはなかった」とじいちゃんは言う 尾道市立向東小学校五年 山口 雅翔
ありがとう平成終わり新時代家族で見守る令和の瞬間 庄原市立高野中学校二年 門主 律己
ただいまと大きく叫んでみたけれど帰ってくるのは孤独と涙 安芸高田市立向原中学校二年 平山 颯大
ありがとう笑顔で言われ暑さとび愛であふれる給水作業 県立三原高等学校二年 杉原理々沙
お盆には毎年通った祖母の家今は閉ざされた玄関の門 県立三原高等学校二年 松重 史大
部活後に海へ飛び込む仲間たち笑顔溢れる十七の夏 県立三原高等学校二年 児玉 敦美
街灯の下でまだ来ぬ君を待つ雪降る夜の寒さ忘れて 県立府中高等学校一年 吉本 朱希
秋父と記念館で手紙読み後に仰いだ知覧の青空 県立尾道北高等学校一年 土井 岳人
様々な学校から来た制服がひらひら揺れるオープンスクール 呉市立呉高等学校一年 本田 暖萌
待機児童災害被害高齢化国のお金は東京五輪 広島市立牛田学校二年 本中  凜

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
黄落の木の間にブルーシート見ゆ豪雨災害地野呂山麓に 呉市 古谷 明子
【評】七月豪雨被災地の、秋も深まる頃の様子が確かに詠じられており、現地の実態、作者の思いなどが切々と伝わる。
征きしまま南の海に果てし義兄盆花揃えて迎火を焚く 庄原市 川崎冨士子
【評】戦死した義兄を悼み盆には今尚迎火を焚くというのである。老いた作者の行為、歴史の影、ともに重いものがある。
こんすいの姉にすがりて名を呼べばみけんのしわのかすかにうごく 三次市 寺岡ハルコ
【評】一つ一つの言葉が緊密に働き合っており、姉の容易ならざる容態と、その場の空気が、ありありと伝わってくる。
夾竹桃しきりに揺れて花こぼす八月六日朝雨の中 広島市 山本 玲子
【評】今年の八月六日の朝方は雨が降っていた。事実を重んじ言葉を丁寧に綴って、様々なことを思わせる味わいがある。
似合わない口紅の色引きながら二十歳の手鏡手元に戻す 呉市 前本百合子
【評】かすかな行為、ふと心を過る儚い思いも短歌の大切な要素。ここではそれらが詩情を帯びながら捉えられている。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
みごもれるあなたのためにつややかなトマトを選ぶ真夏日の午後 広島市 熊谷  純
再起への試歩ひたすらの妻に添う果樹園の施肥終えし夕べを 尾道市 仲尾  修
補聴器を外せば音の無い世界朝な夕なの耳鳴りばかり 庄原市 荒木美智子
いつよりか村人の言う夫婦めおと滝並びつつ一つの滝壺へ落つ 広島市 高野 和子
川に映ゆる原爆ドーム揺らしつつ古式泳法七十歳ななじふが見す 安芸郡海田町 光岡 詔子
泥水に追ひ詰められて翌朝に我が家見捨てたり七月六日 広島市 小野 系子
息を呑む濃きむらさきの山つつじ見る人もなく山かげに咲く 広島市 井上 宝護
星影の漏れ射す厠の燈をョり忍びて讀みし宿舎の戰中 広島市 高村 好秋
出棺の時の間晴れて靄深き向山むこうやまよりホトトギスの声 呉市 石田 操子
古稀過ぎてめくる短歌の入門書消えゆく故郷を詠み残さんと 広島市 中村  武
水無月の夕べの空の茜色浴びつつ夫は畑を耕す 庄原市 安川 博子
山畑にわがつくりたる茄子胡瓜目籠に入れて山道下る 広島市 大林  實
畑への踏みてかためし近道は夏草の中母三回忌 広島市 藤井 良子
骨折の患者の背中今日は拭き明日は足まで洗ってあげたき 呉市 前田 早紀
青き空見る暇もなく実習に追われる日々や夏は過ぎゆく 呉市 溝部 朝子
久々に制服を着て我は行く桜並木の坂道上り 呉市 石田 留美
令和元年終戦記念日に逝きし夫兵器廠の黒き門鑑遺せり 福山市 桑田瑳代子
図書館の窓という窓青葉萌ゆ今も難解「善の研究」 大阪府吹田市 出口 政春
茅を刈る村の慣わし伝えんと保護者は子らを茅場へ率いる 安芸郡府中町 石橋 康徳
花供え柩の中の次兄あに拝む涙あふれて止まらざりけり 広島市 樫原 葉子