けんみん文化祭ひろしま'19文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'19文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】梅本武義 選

【短歌】梅本武義 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
靴下を脱いでもはいてる靴下は部活で出来た日焼けの勲章 盈進中学校二年 内海茉奈花
【評】靴下の日焼けの跡を履いているとの表現が素晴しい。炎天下のグラウンドで練習に励んでいる姿が浮かんでくる。
タンポポが夜になったら花をとじドレスのお店へい店したの 庄原市立比和小学校五年 永田 心結
【評】咲いているタンポポをドレスに見立て、花を閉じるのを閉店と言う。その感覚が良いと思い選んだ。
後ろから抱き着く弟冷たい手「つめたいね」ってぎゅっと握った 庄原市立庄原中学校二年 竹田 侑永
【評】姉と弟の微笑ましい情景が目に浮かぶ。「ぎゅっと握った」に作者の弟への優しい気持がこもっている。
休み明け私のあだ名はコーヒー豆そこまで焼けてないんだけどな 呉市立呉高等学校一年 井田 万葉
【評】夏休みが終って新学期の始まった時の教室が見えてくる。あだ名からほどよく日焼けした可愛い作者が思われる。
亡き友とかつて遊んだ廃校舎おとずれみれば彼岸花咲く 県立三原高等学校二年 佐藤 英斗
【評】廃校舎は統廃合で廃止の小学校だろうか。遊んだのは低学年の時のように思う。彼岸花咲くと巧くまとめている。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
新学期皆の笑顔と笑い声白い歯輝く小麦色の肌 呉市立仁方中学校三年 二宮 遙菜
初試合気合いを入れて立ち上がるラケット握る手に汗にじむ 広島市立牛田中学校二年 小出さくら
ポツポツととても静かに雨が降る僕の中にも雨が降ってる 盈進中学校二年 櫻木 大和
八時間鈍行だけの一人旅広島発の春の大和へ 広島市立牛田中学校二年 上野  祐
何一つ覚えられずに朝が来る私の頭はいつも満員 県立尾道北高等学校一年 岡ア 花音
小説を開いて始まる小旅行今日も私を誘ってゆくよ 呉市立呉高等学校三年 上野優希菜
目の前にカップル二人手をつなぎ見つめてしまう自分の手のひら 広島市立伴中学校二年 中田 海成
音のない校舎がなんだかさびしくて高く鳴らしたトランペット 広島市立五日市観音中学校二年 柳川 愛羽
深緑の葉の葉脈を見てみれば想い出糸のようにびっしり 広島市立三和中学校二年 西家 鯉一
様々な学校から来た制服がひらひら揺れるオープンスクール 呉市立呉高等学校一年 本田 暖萌
テスト前謎の余裕のモナリザはテスト後まさにムンクの叫び 広島市立大州中学校二年 中井 結菜
ハンバーグ母といっしょにはしならべ父の帰りを待つ金曜日 庄原市立庄原中学校三年 三村百合香
向日葵のように輝く君の笑顔僕にとっての栄養補給 呉市立呉高等学校一年 河ア 美里
父とする年越し前の大掃除アルバム手に取りなかなか終わらず 庄原市立庄原中学校二年 横山 遥音
車乗り「ただいま」だけで機嫌知る母に読まれる私の一日 庄原市立庄原中学校二年 稲垣 帆乃
残暑過ぎてやっと下向き目が合ったひまわりの顔私に近付く 県立尾道北高等学校一年 山根 花菜
ラケットでシャトル打つとき振り切って私の汗もどこかへ吹っ飛ぶ 盈進中学校二年 土肥 優花
PK戦止めたら勝ちのこの場面静まる歓声集中する僕 盈進中学校二年 石間 大誠
将来はあんな先生なりたいな目指してるんです実政先生 尾道市立向東小学校六年 森谷 安未

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
「本物だ」原爆ドームを「本当マジかよ」と呟き見上げる中学生は 廿日市市 金子貴佐子
【評】遠隔地の修学旅行の生徒の呟きを取り入れてリアリティーがある。中学校の平和教育を垣間見る思いもする。
さよならとそそくさ車中へ消えゆきぬもう会えぬかも知れぬさよなら 呉市 岩崎美津子
【評】高齢者の別れのホーム。慌しく去る友に心残りを感じる作者。名残が尽きないのを吹っ切る友かも知れない。
子鴨二羽親の波紋の中にいて春の陽の差す水面に遊ぶ 三原市 小白 照子
【評】「親の波紋の中」が情景を巧く捉えている。詠まれているのは波紋の水面であるが、のどかな春の湖水が浮かぶ。
辛い日も投げ出すことなくやれるのは幼き日より夢があるから 呉市 奥間 真愛
【評】初心の素直な歌と思う。夢は看護師としての福祉の貢献ではないか。高齢化社会にとって心温まる一首である。
エプロンをつけたまんまで主婦を脱ぎ社説コラムを丁寧に読む 呉市 平賀 敏子
【評】上句が面白い。詠む新聞は朝日、読売、産経・・・。私らの世代は「日本の新聞は中立」と学んだが、今は違う。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
再起への試歩ひたすらの妻に添う果樹園の施肥終えし夕べを 尾道市 仲尾  修
ゆっくりとめくる原爆死没者名簿亡父の名前を風の撫でゆく 呉市 本 和惠
ソロモン沖夫と洋上を生きのびし水筒ゆらり…無言の語りべ 広島市 小田ハルヱ
補聴器とめがねラジオを枕辺に夜ごとらる小さな機器に 廿日市市 岩木美代子
みごもれるあなたのためにつややかなトマトを選ぶ真夏日の午後 広島市 熊谷  純
あの笑顔手の温かさ皺の数実習の日の出会いに感謝 呉市 沖 まどか
いつよりか村人の言う夫婦めおと滝並びつつ一つの滝壺へ落つ 広島市 高野 和子
ちから込め「平和宣言」雨の中黄菊は搖るる人は沈黙 呉市 小川美和子
風過ぎて金木犀の香の真中声ころがせてグラウンドゴルフ 福山市 田中 桂子
遺骨なき戦死の祖父の墓を拭き戻らぬ声を掌で聴く 庄原市 古家八千代
豪雨去りござ敷きしごと伏せし稲泥払ひつつ起こしゆく爺 庄原市 奥井 久子
川に映ゆる原爆ドーム揺らしつつ古式泳法七十歳ななじふが見す 安芸郡海田町 光岡 詔子
潮の香の混じるホームにふさわしき童謡を聞く「カモメの水兵さん」 三原市 桝宗 範子
泥水に追ひ詰められて翌朝に我が家見捨てたり七月六日 広島市 小野 系子
図書館の窓という窓青葉萌ゆ今も難解「善の研究」 大阪府吹田市 出口 政春
賑やかに花トンネルを行く電車三江線は今日を限りと 広島市 種村 明雄
水仙の里は我が町荒磯波乗りて泳ぎし海見ゆる丘 広島市 松本壽賀子
青田風吸い込むごとく開け放つ峡に残りて暮らす我家は 三次市 林  敏明
旧の二基のショベルカーつめ折りて黒く浮かびぬ朝焼けの道 安芸郡海田町 堀内 孝子
玄青き空見る暇もなく実習に追われる日々や夏は過ぎゆく 呉市 溝部 朝子