けんみん文化祭ひろしま'18文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'18文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】梅本武義 選

【短歌】梅本武義 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
教室にひびいたあくび振り向くと君は笑った顔あかくして 広島市立三和中学校二年 坂本 聖奈
【評】思わず声の出たあくびに教室全員の目が向き、真っ赤な顔で照れ笑いの生徒、その情景が鮮明に浮かぶ。
遊ぼうよ私を誘う小さな手しっぽのついた白い弟 比治山女子中学校一年 高橋 雅輝
【評】「しっぽのついた白い弟」が言い得て妙。「小さな手」が子犬を連想させて心暖まる一首である。
もしかしてわざと歩幅を狭くする気づいた私は密かに微笑む 県立三原高等学校一年 池田  碧
【評】もしかしてが歩くうちに私に想いがあるのだという確信に変わる。その嬉しさを一首に上手くまとめている。
パンパンのかばんとつかれた私の手あのランドセルがとっても恋しい 福山市立福山中学校二年  柳井 麻寿
【評】中学生になって手に持つかばんとなり、教科書の増えて重たく、疲れた姿の作者が見える。下句が素晴しい。
ありがとう小さな命にそう言ったハムスターは輝く星に 広島市立三和中学校二年 佐藤  舞
【評】歯切れよくリズム感のある一首。作者の小さなペットを愛する優しさがにじみ出ている。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
君の前通る前は鏡見てわざとゆっくり歩きます 広島市立三和中学校二年 大田 茉依
夕暮れ時教室から見るグラウンドある人探し眼鏡をかける 県立世羅高等学校三年 吉儀 優依
暑い中牛の赤ちゃん生まれたよモーモーと鳴き自分で立った 庄原市立東小学校五年 速見 柚輝
大雨が降っていたが寝てしまい起きてびっくり辺りは洪水 銀河学院高等学校三年 松本  愛
「あいつだろ」からかう君の勘違い心の中でためいきをつく 広島市立三和中学校二年 酒井 実里
かき氷色とりどりに舌染まるお互い見せ合いみんなで笑う 県立総合技術高等学校三年 古井 萌生
私たち四人兄弟よお母さんなんでもう一個買わなかったの!? 福山市立福山中学校二年 佐藤 咲月
試合中みんなの声が消していく私の不安を春風のように 三次市立塩町中学校二年 岡野 菜生
夏の午後釣り糸垂らす用水路元気な鯰バテバテのボク 福山市立培遠中学校二年 貝原 諒哉
父さんとシャボン玉して遊んだよ日にあたったらダイヤモンドだ 庄原市立比和小学校四年 永田日乃香
火星来た肉眼だけじゃものたりず双眼鏡で見つめる夜空 県立竹原高等学校二年 先家 鈴菜
友との会話急にピンチがやってくる電車追いかけ必死の形相 福山市立福山中学校二年 頃末 夏希
三者懇考え直せ志望校母と先生タッグで責める 呉市立呉高等学校三年 兼満 啓太
品評会いっしょに出たよぼくと牛あっと思うとふんふんじゃった 庄原市立口北小学校三年 山岡 大起
仏壇に胡瓜の馬と茄子の牛炭坑節が夜空に響く 県立尾道北高等学校一年 田坂 弥久
夕暮れとともに茶色くなるズボン汚れの数だけ勝利がふえる 広島市立三和中学校二年 広中 孝星
春の朝大人運賃にぎりしめ二百円ぶん背伸びして待つ 県立広島中学校二年 三宅 結衣
十五夜の月見て悟る忘れ事そうだやらねば国語の短歌 県立世羅高等学校三年 野原 凌央
隣から僕の話題を話す声あれれあれれと期待する僕 広島市立三和中学校二年 佐古 凌雅
ワクワクも旅行カバンにつめこんだ重たいけれどスキップしてく 庄原市立東小学校五年 石出 心羽

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
肉親を探す伝言まのあたり被爆校舎の剥したる壁 安芸郡府中町 石橋 康徳
【評】保存してある被爆校舎の壁の伝言を読み、当時の悲惨な状況を思い浮かべている作者の心情が伝わってくる。
今少し生きて五輪をんというリハビリに励む卒寿の夫は 広島市 田原 正子
【評】昭和三十九年の五輪の時壮年の夫、日本の復興に貢献した世代でもある。五輪に一入の思いのある姿が浮かぶ。
将来はダンサーになる九歳の少年の夢土石に埋まる 庄原市 橘  京子
【評】華やかな少年の夢が土石により潰えると淡淡と詠み、豪雨禍の被災地の惨状と悲劇を甦らせる巧みな作である。
店たたむ父の算盤五つ玉五十余年の手垢染み込む 福山市 肥後 弘子
【評】後継者が無く店を畳まれるのだろうか。リズムのよい一首で悲壮感がなく、遣り遂げた思いを感じる。
朝のバス誰が開けたか缶コーヒー車内に広がる香は南米か 呉市 本 和惠
【評】始発地から間が無く、乗客の疎らなバス車内、コーヒー通の作者の産地を考えつつ満更嫌でもない様子が窺える。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
線路の土砂撤去されたり再開の一番列車わが前を過ぐ 安芸郡海田町 堀内 孝子
先生と背から呼ばれて振り向けば権太教へ子二児のパパなり 広島市 松本壽賀子
獅子舞の胴の役目のの孫の両脚おどる笛にあわせて 廿日市市 岩木美代子
片言で内緒話をする孫の息暖く耳にかかりぬ 広島市 田中 睦子
リフォームをと思えど今年もまた仕舞う夫の身丈の大島紬 福山市 田中 桂子
亡き姉の吊せし玉ネギ青き芽を直ぐとのばして竿に並びぬ 広島市 藤井 良子
シャベル振る軍手に鮮血にじみおり被災の地にて痛み言わぬ君 広島市 夕雲
大正の校舎がついに崩される遥か遠くの山並かわらず 庄原市 市川美南子
好きな色好きな模様のブラウスで若き日のごと母はご機嫌 尾道市 砂田 悦子
半月の影淡き道もどり来ぬおさらいの手話くりかえしつつ 庄原市 山本 照子
そよ風がスカートの裾なびかせて話しかけるよ君ならできる 呉市 溝部 朝子
ハイヒール一度も履かぬO脚を撫でて青春色褪せたまま 呉市 平賀 敏子
松手入れの男空より降りてくる広げた空にうなずきながら 広島市 岩本 幸久
若葉まだ淡き緑の楠の下新入社員のスーツが急ぐ 三原市 古屋敷和也
子の叫び思わすごとく作業機は壁崩しつつ唸りておりぬ 廿日市市 東 知佳子
洪水にまみれて咲ける浜木綿のそこだけ明るし匂いを放つ 広島市 高亀 美子
「目ざめたらお食べ」と妻に書き置いて果樹園予防の噴霧器背負う 尾道市 仲尾  修
九人の園児らならびて写りおりカメラ見ているのは一人だけ 大阪府吹田市 出口 政春
手を振りてデイサービスへにこやかに友と語らい少女となりて 庄原市 井上 陽子
玄関に破れたままの傘を置くあの日の雨を忘れぬやうに 広島市 森 ひなこ