けんみん文化祭ひろしま'18文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'18文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【川柳】林 武志 選

【川柳】題「静か」 林 武志 選


※コンピューター環境で表示するため横書き表記としています。ご了承ください。

【特選】

作品 地域 お名前
フクシマの土が貫く黙秘権 三原市 野村 賢悟
【評】フクシマの汚染土は袋に入れられ幾重にも積み重ねられている。「どうしてくれるのか」と静かに黙秘権を貫く。
生きぬいた静かな母の私小説 呉市 荒新 悠子
【評】私小説という単語は良く使うが、「静かな私小説とは」、可もなく不可もなくそれでいて幸せな一生を送られたのだ。
ブランコを風が揺らした高齢化 広島市 豊田 芳香
【評】過疎地だけでなく、この句はむしろ都会の古くなった団地をさすのでは。ブランコを子供ではなく風が押す静寂。
生きようね静かに泳ぐ母の顎 広島市 小西 博子
【評】「生きようね」この言葉に心が動いた。高齢化社会を担保にとった句だが、「顎」以外に別な着想はなかったのか。
事もなく静かに暮れた仕舞風呂 庄原市 安藤 幸江
【評】酷暑、台風、地震が今年は特に日本を襲った。その中で今日も無事終る。決して高度の句ではないが実感を伴う。

【入選】

作品 地域 お名前
夕焼け小焼け静かになった影法師 三原市 笹重 耕三
燃えたくて火種静かに風を待つ 東広島市 渡辺 典子
団地から子等の声消え昭和消え 広島市 岩崎  桂
静けさに呑まれて溶けて風になる 広島市 豊田 佳子
柿ふたつ残して過疎の空深し 府中市 甲斐 斐夫
思い出を静かに消した無人駅 広島市 河浦 邦子
二人いてひとりひとりの秋の夜 広島市 正山 史明
風を着て靜かな部屋でページくる 東広島市 高橋 鬼焼
命一つ静かに消えて朝迎え 三次市 伊藤 寿子
洪波越え静かにひいていく余生 呉市 山本  檀
喧騒に慣れて静かを持て余す 福山市 村田 幸夫
ブーム去り静かに引いていく空気 三原市 橋 博郁
静かな夜風の答えを待つ老後 呉市 佐藤 春夫
コオロギの一つ静かに聞く晩夏 広島市 吉川美佐子
平穏に謝して写経の筆を置く 福山市 北村 善昭
ひと呼吸置いて静かに幕を引く 広島市 大杉 綾子
わたくしの声に答える声がない 広島市 福田 淳子
物言わぬ静かな海は深いのだ 広島市 川本 敏雪
しくじって以来寡黙な影になる 三原市 大森 昭恵
サーブ前ピンポン球しか聴こえない 県立尾道北高等学校一年 三島 来輝