けんみん文化祭ひろしま'17文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'17文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】梅本武義 選

【短歌】梅本武義 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
先輩と呼ばれているのが自分だと気づかず無視した先輩初日 福山市立福山中学校二年 大本 琴子
【評】二年生に進級したばかりの作者の部活の様子であり、人柄が伝わってくる。結句の「先輩初日」が効果的である。
たんざくが人の願いを身にまとい夏の夜空を風とただよう 広島市立伴中学校二年 河本 梨楓
【評】七夕の短冊を巧みに表現しており、心地よい風の吹く夏の夜の星空の浮かんでくる良い歌である。
浴衣着て慣れぬ下駄履き付いて来る君の歩幅に合わせて歩く 県立尾道北高等学校一年 津島 紗南
【評】微笑ましい青春の一ページを見る思いのする一首である。下句にやさしい気持があふれている。
茶華道部抹茶のかおりに花のかおり部室はいつも日本のかおり 府中町立府中中学校二年 宮西 咲幸
【評】茶華道部の部室を「かおり」のリフレインで上手にまとめており、結句の「日本のかおり」がよく効いている。
実家から毎週届く夏野菜まがったキュウリに祖父母を想う 県立三原高等学校二年 浜田 颯介
【評】まがったキュウリの具体が生きている。年老いて腰が曲がりかげんの祖父母の姿が浮かんでくる。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
母さんに「起きなさい」といわれても僕の頭はまだ夢の中 庄原市立庄原中学校一年 堀尾  央
祖母の顔歪んでいるのは何故なのかふと気付いたのは八月の朝 広島市立大州中学校二年 重森 美玖
君と見た将来の夢忘れない空の向こうでつながってるから 県立世羅高等学校三年 松本 芽吹
雪だるま僕がとけたら春がくる悲しいけれど春よこい 府中町立府中中学校二年 平石 芙生
夏休みいとこが来るがすぐ帰るいっしょに行きたい石川県へ 尾道市立向東小学校四年 端ア 心結
海の風ささやく声が聞こえそう海の声かな人の声かな 尾道市立向東小学校四年 大元 來華
夜になりかえるの合しょうはじまるよまるでカープのおうえんみたい 庄原市立東小学校二年 岩ア  湊
蝉の声頑張る私の応援歌しかし進まぬ白いプリント 県立総合技術高等学校三年 岡田 佳奈
ほろ苦い少し大人へ駆け出したミルク六割コーヒー四割 県立総合技術高等学校二年 歌田 萌花
いつの日か今の練習が役に立つと信じとかないと心がもたない 県立総合技術高等学校一年 古川 蓮斗
うちの子は瀬戸田生まれの元野犬それでも可愛い我が家の家族 山陽女学園中等部二年 粟野  杏
夏休み母さん寝坊していてもみんな休みで心配ないよ 山陽女学園中等部二年 福川ももこ
駐屯地花火大会きれいだがPAC3は打ち上げないで 比治山女子高等学校一年 神田 久美
マフラーに顔をうずめて寄り道し友と分けあう馴染みの肉まん 県立三原高等学校二年 平田 千佳
電車内混み合う中でふと見れば一人つき出る僕の身長 福山市立福山中学校二年 山根康太郎
あめあがりきれいなにじがでているよむこうのやまとやまをつないで 庄原市立粟田小学校一年 藤本 千早
初盆の祖父思い出をありがとうたばこの匂いまだ残ってる 清水ヶ丘高等学校三年 玉井 花菜
溶岩の灼熱色に照らされて何を感じた終の恐竜 広島市立伴中学校二年 三登 成珠
伝わるよ原爆ドームで被爆者のあの日の恐怖と心の傷 庄原市立高野中学校二年 平野 美咲
町内に朝から響く大合唱夏のあかしはこのコンサート 銀河学院中学校一年 前田 廉之

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
自らが浴び尽くしたる原爆のドームは黙し黙し伝える 広島市 小尻カズ子
【評】原爆ドームは広島県産業奨励館が原爆投下により破壊された姿である。百聞は一見に如かずのことわざがある。
いつからかスカートをはかぬ身となりて白エナメルのバッグも置き去り 呉市 多賀 正乃
【評】若い頃はスカートに白エナメルバッグで華やかな雰囲気を醸していたものをと、遠く思いを馳せる嫗が浮かぶ。
熟れ色がつき始めれば稲穂より一段高く稗が顔出す 三次市 眞丸 利子
【評】稲穂は熟れると垂れる。稗は実が軽いから垂れることはない。慣用句の世界の情景である。
元朝を産土うぶすな神社に参詣すこの境内より父は征きたり 三次市 岡崎 明治
【評】身近にある鎮守より出征された父上は戦死されたのではないだろうか。毎年の初詣に父を偲ぶ作者が思われる。
ポイと置き行方不明のメガネなり今日も足取りを追いつつさがす 安芸高田市 藤井美智子
【評】老眼のメガネかと思う。時折使用し、何気無く置き、はっと気付く。我が身につまされる事柄でもある。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
母差せば児には安堵の日傘なり二人の小さな世界が歩く 福山市 廣本 貢一
大粒の汗がしたたる送り状受取欄が濡れて書けない 呉市 徳増 龍雄
蕗の葉に盛られた花と泥団子幼の呉れた今日の御馳走 神石郡神石高原町 馬屋原 要
打ち据えたき思いのふいに滾れるに手渡す新聞凶器とならず 福山市 若林美知恵
鯖缶を開ける力も失せし年齢としいやまだリンゴの皮は連なる 広島市 野島 桂子
コンピューターのつくりし平成文化なり介護ロボットは今をやさしく 呉市 山本 敏治
さくらんぼ持ちて見舞に来し孫はその半分を食べて帰りぬ 広島市 山口 順子
朝顔の花の季節も何時か過ぎ種持つ蔓の垣根のぼれる 三次市 松田 一枝
ヒゴタイの咲く学校に児童の声と熊鈴の戻る二学期の朝 庄原市 古家八千代
まだ明けぬ早朝散歩雪道に一足早く狐足跡 三次市 日野タカ子
平和とう世の有り難し両の手に雑草くさと戦う軍用手袋 呉市 三浦千枝子
ガン告知にも動揺をせぬ夫はあの夏死んでいたかもしれぬ身 広島市 岡田 郁枝
匂にてじばさんフェアにさがしたり「ねこじゃらし」とうたこ焼きの店 福山市 田中 桂子
杖曳くは恥ずかしいとて友のつく雨傘空を飛べたらいいね 尾道市 橘和 淑子
終活をぽつりぽつりと語り合う日向ぼっこの秋の縁側 三原市 豊原 国夫
ふるさとの歌を歌えば目に浮かぶ福島の家荒れて草生す 広島市 前田 正夫
被爆者の言い伝えたるピカドンは生の言葉ぞ風化させまじ 三原市 村上 召三
日射受け雪の落ちたる木守柿紅く輝き青天に映ゆ 三原市 山重 富子
ふるふると果実太れる七月の豪雨も天恵めぐみと思うべきかや 福山市 岩尾 芳子
年とるを未知の世界のぼうけんと追い求めしひと百五歳を生く 尾道市 久保 ヒデ