しりとり

県立府中高等学校一年  栗栖 朱里

車の中
暇な時間
何もすることがない

暇な時間
過ぎてゆく
ポツリ
助手席にいる兄が話す
「しりとりしようぜ」

暇な時間
少しだけ楽しくなる
淡々と進んで行くしりとり
だんだん言葉がなくなる

暇な時間
いや、楽しい時間?
言葉が無くなってきた
いつの間にか単語は文になる
「兄さんずるい」
そう言って
兄さんにちょっかいを…

助手席にいる兄さん
携帯で何かしている
言葉を調べてるの?
怒りがフツフツ
でも、覗いてびっくり
画面の中には英単語

暇な時間
もう無くなった
兄の優しさが
私に楽しみをくれた

いつもはキツイ
いつもはヒドイ
いつも、喧嘩をふっかけてくる

でも、本当は優しい
私の最高の兄

しりとり
「次お前だぞ、『あ』から始まる言葉」
笑みがこぼれる
そんなの一つに決まってる

いつもは言えない
感謝の言葉
父さんにも、母さんにも
言ったことあるのに
兄さんには言ったことない
恥ずかしくて 負けた気がして
嫌だから
だから気づかれないように
そっと言う

『ありがとう』って
そっと言う
照れ隠しの私のしりとり

[閉じる]