壊してはならぬ平和と叫ぶ声六十九年目の胸にひびける
|
広島市
|
三浦 恭子
|
【評】平和を願う思いは広島に生きる者にはひときわ切実だ。社会詠の硬さを感じさせない結句に心の深さを思う。
|
盲たる母の手をひく少年の帽子にかげるとまどいの笑み
|
広島市
|
清水亀美恵
|
【評】障害のある母親に対する優しさの中に思春期の羞恥心など少年の複雑な心情をみている。下句にうまく表現された。
|
暗闇に小さき光点見つめゐる視野検査とふ孤独なる刻
|
庄原市
|
家島 晶子
|
【評】】暗闇、光点、孤独な刻などの言葉の響き合いから、検査時の不安感までも伝わる。言葉に無駄がない。
|
【評】老夫婦の穏やかな愛の交感。たとえ手櫛でも夫の面会前には身だしなみを整えたいと思う妻。「手櫛」が効いている。
|
まどさんの逝きて淋しき詩の世界ゾウもおならもゲップも彼の世
|
尾道市
|
山崎 尚美
|
【評】「一年生になったら」よりも「もりのげっぷ」「おならはえらい」を詠みこんで個性的。詩人まどみちおに相応しい挽歌。
|