けんみん文化祭ひろしま’14文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま’14文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】上條節子 選

【短歌】上條節子 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
また明日も暑くなるのと問う空に飛行機雲の答えはイエス 庄原市立庄原中学校三年 友清 美悠
【評】若さと感性あふれる歌。飛行機雲は啓示のようにも仲間のようでもある。結句のイエスにのびやかな景が広がる。
七月一日日本が変わった八月六日平和を願う悲しみの雨 県立向原高等学校三年 中山 美優
【評】集団的自衛権行使容認の閣議決定と平和記念式典の二つの日付。四十三年ぶりの雨に平和への憂いが重なる。
園児たちタッチしたのに逃げていく私はきっと終わるまで鬼 府中町立府中中学校三年 平尾 紗弥
【評】職場体験での保育実習。鬼と体言止めにしたことにより想像が広がり作者の軽い溜息と微妙な淋しさが感じられる。
ホイッスル胸が高鳴るこの瞬間人は誰でも主役になれる 福山市立福山中学校二年 佐藤 太晟
【評】人は誰でも主役になれる時がある。たとえ負けても。緊張の一瞬の輝く気持ちをうまく掬い取った。
十秒間はねを広げてとんでいた小さなバッタがじょうずに着地 三原市立木原小学校三年 田原 龍輝
【評】じっとバッタを見ていたのですね。光景が目に浮かぶようです。小さなバッタに対するあたたかい眼差しがいい。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
食卓にきれいな黄色湯気たててがぶりかみつく産地直送 県立総合技術高等学校二年 吉田 百花
はたらけど身の丈ちぢみ汚れてく誰にもわからん鉛筆の気持ち 福山市立城南中学校二年 本庄 真菜
友達の熱い声援聞こえてる応えられない自分悔しい 福山市立福山中学校二年 杉原 那奈
おかあさんしごとをみつけにでかけたよどんなおしごときまるといいな 庄原市立粟田小学校一年 佐々木真凛
おいしそうソフトクリーム溶けちゃうね空のデザートにゅうどうぐも 福山市立城南中学校一年 小林 咲紀
夏の朝せみの声で目を開ける八月だけの目覚まし時計 県立因島高等学校一年 津田 琴美
とびちがう雲の向こうの流星群だれにも見られぬさみしき夏夜 福山市立城南中学校二年 三村 優介
平和への一歩一歩が遠ざかる梅雨の滴が涙に変わる 県立世羅高等学校二年 石岡 わこ
言葉無しおもちゃとりあう子どもたちにらみあいがね勝負を決める 府中町立府中中学校三年 江戸 遥香
夏休みやりたいことを書き出すと楽しいことが起きる気がする 比治山女子中学校二年 大瀬戸美咲
大山にも裏と表があるんだね人も自然も同じ世界 広島市立飯室小学校五年 原田 知佳
よっこらしょふとんをおして出てきたよちょっと休んでひまわりのびる 庄原市立比和小学校四年 白根 浩奈
笛が鳴り最後のシュート放つ君入れと祈るばかりの私 清水ヶ丘高等学校一年 石川こなみ
走るたびすき通っていく風の色一秒のために駆け抜ける日々 庄原市立庄原中学校三年 永井 美彩
飛行機かいや希望だよ夏の夜に宇宙ステーション見えかくれする 福山市立城南中学校二年 金山 悠貴
セミさんは暑さに負けずジジジジジ負けた私はエアコンつけた 福山市立城南中学校三年 吉居 育美
頑張れと叫ぶ友達その声が自分の中の頑張るになる 大竹市立玖波中学校二年 山本 君代
夏休み皆で一緒に肝だめし行きは三人帰りは五人 福山市立城南中学校二年 倉田  陸
雨が降り葉っぱの上に水たまりきらきら光る小さな水源 庄原市立庄原中学校一年 畑廣 栞奈

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
むらの名はとうに消えたる今もなお時に書き消す友への文に 三次市 藤井百合子
【評】合併により失われた村の名。「書き消す友への文に」に古里そのものを失ったような寄方ない寂しさが感じられる。
消へそうな命見舞ひしその帰り鮨の定食誰も残さず 福山市 大江 文枝
【評】人は命を食べて生きている。命に対する敬虔さが歌の流れから伝わる。初句、歴史的仮名遣では「消えさうな」。
寂しくて絡むほかなくからみつく生涯へくそかずらであれば 広島市 森本 直美
【評】ヘクソカズラとはまこと気の毒な名である。人にとっての異臭ゆえに。作者の閉塞感と居直りの感じられる心象詠。
壊してはならぬ平和と叫ぶ声六十九年目の胸にひびける 広島市 三浦 恭子
【評】多くを詠わぬことにより、深く届く思いがある。九条が危うい六十九年目の今、声は祈りの鐘のようにひびく。
朝もやを行くたくましき鹿二頭農婦の我に緊張はしる 広島市 西田 裕子
【評】朝靄の中の鹿、絵のような光景も農家にとっては死活問題。省略の効果により一瞬の緊張感が際だった。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
まどさんの逝きて淋しき詩の世界ゾウもおならもゲップも彼の世 尾道市 山崎 尚美
義母看とり労わる言葉ないけれどちょっとだけ夫やさしくなった 広島市 岡田 郁枝
「出て行け」と夫の云いたり窓開けて尖れる空気追い出している 呉市 遠藤 晴美
人参のにんはどうしてひとなのと思いつつ待つ検診結果 尾道市 橘和 淑子
死者不明者山え治まり難きまま街川濁りて三日目の朝 広島市 松村 常子
浮き苗を元気になれよと差し添える田の面照り返す眩しき日中 庄原市 荒木 純子
するしない心の弱さ見えてきて手術日までの葛藤つづく 広島市 川上 咲良
朝々を家族三人みたりを寄せて病む老犬の呼吸いきをたしかむ 廿日市市 藤本千代子
十代に手探り読破したことも老いて自在に道は開ける 広島市 玉本祈世夫
山里に胡瓜貪る親子猿睨めど無視され彼ら生きゆく 広島市 石丸 一司
物忘れはげしき母がとほき日の大邱での終戦よどみなく言ふ 三原市 村上佐登子
みずいろのブラウスふわりと椅子にあり梅雨のあわいの母の羽衣 山県郡北広島町 西樂 紀恵
甘橘の売場に並ぶまろやかな“はるか”“なつみ”は孫の名でもあり 福山市 金尾 洵子
夫のかげわずかに薄れゆく頃を傘立の杖墓参うながす 庄原市 禰=@澄枝
立秋の挨拶せんと風の土間髭そよがせて馬追いの来ぬ 三原市 村上 悦子
入院の妻はベットに白髪を手櫛にて梳き我を待ちおり 大竹市 赤瀬 勝昭
実習の記録の合間聴こえ来る蝉声に今夏と知りたり 呉市 増木久里子
炎昼に犬もぐったり睡る間を緑涼しくゴーヤはふとる 呉市 草野 綾子
名月に亡き人想ひ庭に佇つ秘めたる心あらはになりぬ 呉市 島崎芙美子
年頃の吾娘にも似たる面差しと母のあるらむ灼かれし汝にも 広島市 大下  香