けんみん文化祭ひろしま’13文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま’13文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】山本敏治 選

【短歌】山本敏治 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
泣きあととホルンの音色夕焼けに照らされ明日へ背筋を伸ばす 県立尾道北高等学校一年 笠井 綾花
【評】哀感を秘めるホルンの音色は高校野球の敗者の音色であろうか。清々しく若者の姿を象徴している表現の下句がいい。
夏の森はげしくさけぶ森の声木からでる声川から出る声 庄原市立庄原中学校一年 佐々木  瞬
【評】森全体を擬人的に捉え、その森から発生する音をそれぞれの声として表現してあるのがユニーク。聴覚を生かした作。
イエローのイチョウの木々から音がするミンミン聞こえる暑い鳴き声 庄原市立庄原中学校一年 古川 茉帆
【評】いちょうの一木一木を楽器として捉えてあり、その音が蝉の鳴き声であるというのは面白い。結句「暑い」までの展開もいい。
ひまわりが太陽めがけ笑ってる畑一面笑顔でいっぱい 庄原市立庄原中学校三年 川本  綾
【評】】一本のひまわりから、ひまわり畑全体へ展開した表現がいい。「めがけ」はダイナミックな表現であり、個性的。
夏の空ひこうき雲が一直線道行く人は上を見あげる 庄原市立高野中学校二年 瀧熊りりあ
【評】上景下景の作。夏空の一直線の飛行機雲には人の目を引き寄せるものがある。注意深い観察の作。下句は小発見である。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
ひまわりのつぼみ開いて笑顔まくゆらゆら揺れてひまわりダンス 庄原市立庄原中学校一年 滝口りょう
祖母の山耳をすませば川の音木々の花歌自然の合唱 庄原市立庄原中学校一年 吉岡 京歌
夏の風吹かれし髪の美しさサラリサラリと空へ溶けゆく 清水ヶ丘高等学校三年 盛谷 瑞希
ふうりんがカランカランと鳴っているすずしげな音こおりみたいだ 庄原市立東小学校三年 東  春奈
クーラーの室外機からの熱風でますますうだる庭の木々です 福山市立福山高等学校一年 有田 拓世
太陽に向かって育つひまわりは自分が輝く瞬間を待つ 庄原市立庄原中学校二年 住吉 佑太
どこまでも朱いあの空振り向くと隣を歩くあなたと自転車 県立忠海高等学校一年 中増 千樹
久々に会う友人は髪も伸び私の知らない時間があった 県立忠海高等学校二年 竹下 梨花
にぎわう夜流れる人の行く先を目で追う後に咲いた火の花 県立因島高等学校一年 長尾 明苑
図書室は本のページをペラペラとめくる音だけ静かに響く 呉市立呉中央中学校一年 西尾 香歩
手をつなぎ一緒に歩いた帰り道今より大きい父の背中 県立因島高等学校一年 吉田紗也加
文化祭三年最後思い出にみんなの笑顔写真につめる 県立向原高等学校三年 松尾 柚希
小さくも大きく輝き散ってゆく心に灯る線香花火 県立総合技術高等学校一年 森下 知輝
せみが鳴き夏の扉が開いたら熱い光が窓からさしこむ 三次市立三良坂中学校一年 宗山  楓
太陽の光を浴びて駆け回る子どもの笑顔向日葵のよう 県立廿日市西高等学校三年 馬場 香織
お昼寝中すやすやねむる子供達嵐の前の静けさのよう 福山市立神辺中学校二年 小寺 由莉
テストとは鏡のようだ点数が心のゆるみを表している 県立世羅高等学校二年 下造座理人
扇風機右に左に首をふり風を求めて追いかけまわす 県立向原高等学校二年 田原 啓太
苦しいと思ったときのおまじない魔法のコトバ「なんとかなるさ」 府中市立府中中学校二年 高橋 宇有
梅雨の朝七つの色のかさ開く雨が上がって明日が見えた 庄原市立庄原中学校二年 渡辺 和之

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
式典のマイクに透る蝉時雨寄り来し爆死の人らの声か 廿日市市 吉田 信英
【評】八月六日の式典の作。蝉時雨と爆死の人を重ね合わせて、異様な雰囲気を醸し出してあり、戦慄を覚えるような作。
母と娘になるはひたすらわが希い百歳の姑のいさらいを拭く 尾道市 吉原 浩子
【評】作者の献身的な介護によって、姑の心も娘以上の親しみを思われているに違いない。感銘深く、実にさわやかな作。
向日葵の百万本のまよひ路出口の見えぬ農を危ぶむ 福山市 橋千恵子
【評】「出口の見えぬ」を農政への風刺にまで転換させた表現は巧み。かつての農地が向日葵畑になっている感慨もある。
酔芙蓉砲のごと蕊を突き出せり九条危ふきこの終戦忌 廿日市市 中村 公子
【評】蕊を「砲のごとき」と捉えたのは観察眼の鋭さ、独自の把握がある。憲法九条の問題を正面から詠まれてあり、好感 。
兄征きし記憶に繋ぐ旗の波サッカー場に打ち振る日の丸 広島市 出口 政春
【評】サッカーの国際試合における応援は熱狂的である。この熱狂が角度を変えると憂慮することになる。「打ち振る」は効果的。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
がっくりの野党はどこへにんまりと微笑む与党よひまわりとなれ 安芸高田市 藤井美智子
栃の木は六百年の孤愁抱き四国カルスト台地に立てり 尾道市 山崎 尚美
亡父ちち歌集うた知らぬ父に出逢いたり語り尽せぬ二人の夜更け 呉市 屋敷みどり
風鈴と扇子の並ぶ土曜市音を売る店風を買ふ客 庄原市 家島 晶子
母さんのうしろ姿によく似たる電動カートやわらかに越す 竹原市 栄谷 和則
公園に声つつ抜けて少年の凧風つかみ秋空を舞う 大竹市 赤瀬 勝昭
農に生き労に堪えるは当然と黄金の稲穂がゆれて励ます 安芸高田市 井上多喜子
虹いろにはまひるがほの続く道ここからは力抜きてゆく道 広島市 三浦 恭子
嫁いだら「辛抱せよ」と母の声耳に残りて円かなる月 尾道市 片山 哲子
淋しさは惰性と言った彼の背に金木犀が一つこぼれる 安芸高田市 木野 葛紗
線路沿ひにゆたゆた歩む襤褸の姿今年も顕ちくる八月六日 三原市 久保田淨子
確かなる足の運びの戻り来て両手に余る野の花を摘む 広島市 田中 睦子
樫の木の梢に風は生まれしやさわさわざわとふきすさぶなり 広島市 丸亀 純子
比島沖にて戦死行年三十四たった一行の父の一生 尾道市 仲尾  修
天空に縄梯子おろし来ませ母たに空木うつぎの里花ざかりなり 福山市 西澤小津枝
「帰りたい!」ホームのドアに張り付ける媼の姿が妣になりたり 呉市 遠藤 晴美
四頭身ほどにされし影坊師と「♪通りゃんせ」待つ間を舗道に灼かる 三原市 川野サダ子
流れ行く雲の形のおもしろき時を忘れてつまと眺むる 福山市 田中 正子
本当はいい妻でした母でしたひとり逝かせた墓を洗いぬ 尾道市 日谷  寛
ブランコを漕ぐ少年の長きあし夕やけ空を蹴りあげてゐる 呉市 月原 光政