けんみん文化祭ひろしま’13文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま’13文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】高野和子 選

【短歌】高野和子 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
手をつなぎ一緒に歩いた帰り道今より大きい父の背中 県立因島高等学校一年 吉田紗也加
【評】父の背中が歳を重ねて小さくなったと普通に言わなかった点が良い。言葉の言いまわしが作品を深くする手本の作。
誕生日プレゼントしたネクタイをボロボロになるまで使う父 県立廿日市西高等学校三年 大山  遥
【評】一位の作に比べこちらは父が子の心遣いに感謝している。「ボロボロ」になるまでの具象に父の人柄がしのばれる。
日光できらきら光る一塁線その先にある木の新校舎 庄原市立庄原中学校二年 永田 翔人
【評】弾むような作者の気持ちが言外から伝わる。特に名詞止めの「木の新校舎」が効果的。山野の背景まで見えてくる。
なつやすみたいくつするとおにいちゃんとけんかだないてもいつものふたり 庄原市立粟田小学校一年 小林 優人
【評】兄弟げんかは直ぐ仲なおりするが、している時は本気。負けて泣きながら兄を憎まず、互いに成長していく。愉快。
おかえりとあなたに言えるこの日々を灯籠立てて待っていました 県立廿日市西高等学校三年 古本 里沙
【評】「あなた」とは夭折した作者の友人かな?魂でしか会えないため、お盆の三日間灯籠を立てて待つという切なさ。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
すずしいなきょうしつのまどあさがおがドレスひろげてだんすパーティ 府中市立上下北小学校一年 黒木 碧恵
ひまわりのつぼみ開いて笑顔まくゆらゆら揺れてひまわりダンス 庄原市立庄原中学校一年 滝口りょう
立ちこぎで一気に上がる登り坂見上げた空には飛行機雲 県立総合技術高等学校一年 南  勇貴
モノクロの世界に時々色が着く黄色い話題で君と語れば 県立世羅高等学校三年 二五 祐哉
カブトムシみつを飲むのに一生けんめい周りの虫をどこかにとばす 庄原市立東小学校五年 清水 正輝
見上げれば輝く花火去年より横見て気付くキミのせいだと 県立因島高等学校一年 海津 圭淑
街路樹が歩く私に日傘さしつくる涼しさありがとう 広島市立東原中学校一年 山本 愛永
猛暑の日光るおでこの汗をふくスーツの叔父はかつらずれてる 県立向原高等学校二年 竹野内里菜
マルとバツどちらがつくか雨の日の沈んだ心で書いた解答 県立世羅高等学校三年 大木原加菜
緊張しなかなか声をかけられぬ何回目だろ通り過ぎるの 県立世羅高等学校三年 松浦 加奈
ひとなみにおごれやなんて難しいルート3って何なんだろう 三次市立三良坂中学校三年 澤田いのり
赤とんぼ父が育てたあの稲にとまり休憩涼しそうだね 県立総合技術高等学校一年 柿村 菜緒
星の粒集めて架ける天の橋船がなくとも渡りきれるか 庄原市立庄原中学校二年 森原きらら
白砂しらすなによせては返すあわしぶき夏の思い出見えかくれする 府中市立府中中学校二年 清川 天斗
しゃりしゃりとぺっぺっと種出しスイカ食べ日差しの似合う夏物語 福山市立福山高等学校一年 渡壁 樺子
懸命に一番目指し漕ぐ姿心と水面ゆらす櫂伝馬 県立総合技術高等学校二年 水井  歩
泣きあととホルンの音色夕焼けに照らされ明日へ背筋を伸ばす 県立尾道北高等学校一年 笠井 綾花
老いていく我が愛犬は手術後に普段来ないが今日はすり寄る 県立因島高等学校一年 白石 里帆
別れの日兄の背中がたくましくて頬に伝わる母の涙 福山市立福山高等学校一年 纉c  素
幼稚園キラキラネームがいっぱいだおみちゃんせひくんちゅらなちゃん 府中町立府中中学校二年 松原菜穂子

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
向日葵の百万本のまよひ路出口の見えぬ農を危ぶむ 福山市 橋千恵子
【評】脅威に見える向日葵の群生は無秩序で道筋が見えないとも言える。低迷する農の現状に景をダブらせた力作である。
母と娘になるはひたすらわが希い百歳の姑のいさらいを拭く 尾道市 吉原 浩子
【評】嫁である作者は姑に対し母娘のようにありたいと希っている。それを支える下句の動作が献身的で美しく胸を打つ。
比島沖にて戦死行年三十四たった一行の父の一生 尾道市 仲尾  修
【評】】作者は感情を殺して事実だけ述べている。つまり言いたい部分を読者に預けた手法が作品を奥深くしている。
秋の陽の水輪広がる砂にピンホールほどの沙魚の眼があり 三次市 錦  武志
【評】「砂」とあるから水が引いた跡であろうか、上頭部に針の穴ほどの目を持つ沙魚の命に秋の陽を降らせた構成が秀。
死してなお誇りのありや落蝉は草生の中に鎧いておりぬ 廿日市市 岩木美代子
【評】上句やや表立つ表現だが、小さいながらも鎧で武装したように見える落蝉に「誇りのありや」と言わしめた死生観。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
靴はかぬ母の足裏あうらに岐路数多一生ひとよの地図をもみほぐしおり 安芸郡海田町 上條 節子
新しき土の香りをとく知りて土蜂は丸く鍬の先舞ふ 庄原市 中原 幹枝
本当はいい妻でした母でしたひとり逝かせた墓を洗いぬ 尾道市 日谷  寛
確かなる足の運びの戻り来て両手に余る野の花を摘む 広島市 田中 睦子
猫の耳は二千の音を聞くと云うせめて一音娘の耳に欲し 世羅郡世羅町 行田 照子
小さき祠にいびつななりの石ひとつ由来黙して風花にむく 広島市 小田ハルヱ
嫁いだら「辛抱せよ」と母の声耳に残りて円かなる月 尾道市 片山 哲子
天空に縄梯子おろし来ませ母たに空木うつぎの里花ざかりなり 福山市 西澤小津枝
虹いろにはまひるがほの続く道ここからは力抜きてゆく道 広島市 三浦 恭子
山かげにくずれし廃家赤土を分けて咲きたる水仙の花 呉市 河野 豊子
無機的なビル立ち並ぶ大通り赤きポストは花のごと在り 広島市 山重 美岐
公園に声つつ抜けて少年の凧風つかみ秋空を舞う 大竹市 赤瀬 勝昭
帰京したる少年の部屋よりあかつきを日々鳴る目覚まし時を違えず 広島市 田中 博子
生まれたとメール届いて初孫は電波に乗ってわが手の平に 広島市 藤井 良子
原爆に母奪われし十一歳それよりつづく夕餉の支度 広島市 難波 靖子
薔薇の園遠出叶いし足弱の妻の笑顔にピントを合わす 尾道市 渡邊 哲
「ただいま」と声かけ入るプラスチックの金魚二匹が吾を待つ家 広島市 吉持 清子
五つ子の翔ちし鴉の巣は古りてさわさわと風つらつらと雨 山県郡北広島町 沖野 幸子
いつの間に銀杏並木が色付いて置いてきぼりの私の日常 広島市 羽城 裕子
咲き椪ふ紫陽花を指し歓声の渦巻きおこす車椅子の子等 呉市 岩倉香陽子