けんみん文化祭ひろしま’12文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま’12文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】高野和子 選

【短歌】高野和子 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
灯籠の明かりの数の悲しみが語り継がれる八月六日 県立総合技術高等学校三年 福原佳奈子
【評】重い内容を力まずに詠い上げた秀作。灯籠の数は原爆犠牲者の数、作者は灯明を見つつ八月六日を胸に刻んでいる。
台風が去った夕ぐれコオロギがかすかな秋を一つ運んだ 比治山女子中学校一年 尾崎 那美
【評】小さな虫とかすかな秋の照応がよくコオロギの擬人化とカタカナ表記に工夫が見られる。豊かな詩情を大切にね。
山口でSLにのったよ窓の外のけしきもつないでぐんぐん走る 庄原市立粟田小学校三年 若林 春奈
【評】観察の鋭さとその視点が快い。新幹線では味わえないローカル線の特徴が下句にリズミカルに表現されている。
ひたむきに丸い太陽追いかけるバレー選手のようなひまわり 県立総合技術高等学校一年 土井 一輝
【評】】太陽をバレーのボールとひまわりの花に掛け、そのまま四句まで比喩を使ってひまわりを修飾する技法の見事さ。
鏡みて大人になる日を待ちわびる熊野の筆でほほを染める日 比治山女子高等学校二年 山下  栞
【評】サッカーの「なでしこジャパン」へ贈られたことで大人気の熊野筆、結句に乙女心と郷土愛がにじみ出ている作。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
里帰り大きかったあの山がいまでは少し小さく見える 県立総合技術高等学校三年 貞重 裕史
たんぽぽの綿毛のようなその種はどこに旅して行くのだろう 廿日市市立廿日市小学校六年 冲原 愛莉
ミニトマトお日さまあびて赤くなりほうせきみたいにキラキラしてる 三原市立神田東小学校二年 實平 美紅
稲刈りをゆうがに見てる赤トンボ真赤な衣裳が夕日に似合う 三次市立布野小学校六年 法野谷 匠
夏の夜星を見つけてふと思うあれがそうかなひいおじいちゃん 銀河学院中学校二年 栗原有利子
かき氷ポタポタ可愛いピンク色スプーンの下の甘い足跡 清水ヶ丘高等学校二年 脇森 美樹
校庭にかかれた白線その上を砂を舞い上げ地をけりつける 庄原市立高野中学校二年 伊藤まどか
軽トラの荷台で犬がすずしそういいもの買った帰り道かな 三次市立布野小学校六年 木屋 緋夏
いねかりだ父さんについてかっていくザクザクザックといっぱいかったよ 庄原市立粟田小学校二年 小林 海人
小鳥さん朝早くから歌のけいこのどがいたくはならないのかな 庄原市立粟田小学校三年 田邉 來華
かわいいな畑でとれたミニトマトあまくてすっぱい太陽の味 銀河学院中学校一年 花岡  香
暗闇に流れる星が表れて静かに動く空の秒針 県立総合技術高等学校二年 折川  愛
渾身の思いを込めた一振りはどこまでも行けあの高い空に 県立総合技術高等学校一年 田中 賢司
盆提灯静かにともる祖母の顔我にほほえむ永遠とわのお守り 清水ヶ丘高等学校二年 尾ア 早希
ぽたぽたと落ちてはじける雨しずく葉っぱの上でも歌っているよ 東広島市立入野小学校六年 戸光  葵
向日葵の大きな頭をぐっと上げ見据える先に今日の始まり 県立総合技術高等学校三年 三好 洋平
厳格な祖父の遺影の永久とわの笑み怒鳴り顔が今や恋しく 県立三原高等学校二年 奥信 亘史
慣れからかいってきますと言う自分返ってこない言葉に涙 県立向原高等学校一年 竹野内里菜

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
山裾を逸れることなく列なして夕日のなかを黒牛がゆく 安芸郡海田町 光岡 詔子
【評】夕日と黒牛の色彩の対比が美しい。売られていくのであろうか、二句のフレーズから観念した牛が見てとれる。
月のぼり月はしづみぬ億年の「神の粒子」の論のはたてに 広島市 三浦 恭子
【評】特異な着眼が目を射る。歌意は置くとして宇宙の究極を探る人間の英知の果たてはともかくも今夜も月は昇る。
子の合格ひたすら待ちて繰り返すトランプ占いは春嵐 広島市 友谷しま子
【評】子の合格を願う親の心境がトランプ占いの行為を通し表現されており、結句の「春嵐」によって立ち上った作品。
歌ことばメモする鉛筆HB・B・2Bへと濃くなりにつつ 広島市 松井 公子
【評】広がりのある作品。鉛筆が濃くなるという事実から、年齢の重なり、歌言葉への執着などが想像できて楽しい。
亡き母の衣服つめ込むごみ袋遠雷鳴りて夕立の来る 呉市 多賀 正乃
【評】類歌はあるが歌の心は捨て難い。下句に心騒ぎとためらいが表出されていてよい。なお「ごみ袋」は耳障り一考。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
被爆なれど太樹ふときとなりて菩提樹は水子地蔵の陰となり立つ 広島市 野島 桂子
職場よりかけいる電話か子の口調他人のごとくわれにもの言う 東広島市 水野 征子
ひそやかに宇宙の渚へゆくごとし秋天高く飛行機雲ひく 大竹市 長門 輝子
未来図は種一粒の中にありみちのくの地に芽吹くものたち 広島市 岩本 幸久
「あら、雨が」君が開きし透明の傘にはりつく桜花びら 呉市 柄  玲子
かたくなに木造家屋にこだわりて一一〇軒を建てて夫逝く 広島市 中川多鶴子
朗読の花巻訛あたたかしチェロとのコラボ永訣の詩 安芸郡府中町 石橋 康徳
被災地の泥にまみれし迷彩服ひまわりの種植へて立ち去る 福山市 大江 文枝
初茗荷無骨の手から貰い受く花やわらかき露の六本 山県郡北広島町 沖野 幸子
こどもらに教わる多し草叢のひめ蟷螂やはらびろ蟷螂 広島市 山本 由恵
おはよう あらおはようさん早春の風あさみどり路地のごみ出し 呉市 岩崎美津子
ふたふわの綿雲うごかぬその向こう「古保里」の森に祖母おおははねむれり 広島市 小田ハルヱ
満月の匂う夜更けに家を出る猫には猫の用のあるらし 広島市 森本 直美
ピカドンの地に片腕と青春を葬り生きて齢九十 竹原市 久保 政子
置き忘れの携帯電話クロネコで宍道湖畔から今日帰宅する 安芸高田市 藤井美智子
一輪車の少年秋の風まとい両手にリズムとりて駆け来る 大竹市 赤瀬 勝昭
今日妻の誕生日なれど贈るもの一つだになく襁褓換えやる 東広島市 飯島 耕一
山の端に入り陽は燃えて沈みゆく塒へ急ぐさえづり連れて 庄原市 禰=@澄枝
目眩する空の青さよ有線は捜索中の児の溺死を告げつ 廿日市市 藤本千代子
すぎしことわれもわすれてたゞ今を認知症なる姑と和まん 三原市 村上佐登子