けんみん文化祭ひろしま’11文芸祭合同大会
トップページ 事業概要 けんみん文化祭ひろしま'11 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】山本敏治 選

【短歌】山本敏治 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
竹の川真白そうめん流れるよそうめん流しはツルツル涼しい 庄原市立粟田小学校五年 田森 百菜
【評】そうめん流しの景をさわやかに表現されてあり、楽しい。結句が巧み。ツルツルがいい。「涼しい」の転換も工夫がある。
つつじ色あなた思えば毎日がくるくる回るコーヒーカップ 福山市立駅家中学校二年 和田 結衣
【評】つつじ色は青春のイメージ。くるくると回るコーヒーカップを、素直に下句の表現としていて、いかにもたのしい。「くるくる」が効果的。
ジリジリと照り付けられるアスファルトしゃく熱地獄を今駆け抜ける 府中市立府中中学校二年 眞田 姫佳
【評】灼熱のアスファルト道を走る作者はマラソンランナーであろう。結句「今」の力点がいい。力強い青年像が伺われる。
月赤くひとつはじける夜花火北の大地の悲しみ思う 銀河学院高等学校二年 古谷美砂子
【評】上景下情の表現にて、悲しみの深さを巧みに詠まれてある。大震災の悲しみは作者独自の感慨として読者の胸を打つ。
大津波奪ったものも多いけど届けてくれた世界の愛を 県立世羅高等学校三年 阿部真里奈
【評】東北大震災を大きな心で詠まれてあり清々しい。散文的な表現であるが、前向きな人間愛の視点に感動の深さがある。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
月の中にかくれているのうさぎさんもちつきしてるのいっしょにしたいな 庄原市立粟田小学校二年 若林 春奈
母さんの特製カレーほおばると口の中では花火があがる 三原市立小泉小学校六年 重坪 雪音
雄大で色んな歴史をくぐり抜けどしりとかまえる大きな首里城 熊野町立熊野中学校三年 原 みかる
夏が来て蝉の鳴く声減ってきた今年団地につぶされた森 銀河学院高等学校二年 纉c 瑞生
夏休み宿題たちの猛攻撃心も身体からだもダメージ受ける 銀河学院高等学校一年 秋田 哲志
腕ずもう父に勝とうとがんばるが手から伝わる父のぬくもり 県立総合技術高等学校一年 末平 啓典
涙には数え切れない思い出と戻って来ない思い出がある 県立総合技術高等学校一年 福廣  敦
履歴書に未来の夢を詰め込んで大きく書いた電気工事士 県立総合技術高等学校三年 池田亜弥香
からだごと太ようあびていねかりだつかれるけれどみんなの米だ 三原市立神田東小学校三年 福貞 千夏
熊野筆多くの人の手をかけてつくったわたしのための一本 熊野町立熊野中学校一年 仲井 瑠菜
そびえたつ黄色に光る向日葵に水をあげると約束したよ 県立総合技術高等学校二年 渡辺 康平
授業中目をそらしたら君の顔甘い果実がキュンとはじけた 盈進中学校二年 三好 優奈
「また明日」明日があるから言えることそんな普通が幸せでしょう 広島市立五日市中学校二年 寺尾佳乃子
クーラーが外は暑いと語ってるでもいかなければ何もできない 府中市立府中中学校二年 竹本 純太
筆づくり自分で作ったこの筆は世界で一つのmy熊野筆 熊野町立熊野中学校一年 井ノ下由梨
頬当たる風には二つの匂いあり夏の静けさ秋の寂しさ 銀河学院中学校三年 井上愉加利
暗闇に光を放つ花火たちみんなの顔に笑顔が咲くよ 銀河学院中学校一年 藤原 史帆
失って初めて気づくありがたさ祖母の笑顔がも一度見たい 県立世羅高等学校三年 為清 郁美
恋をして恋に破れて傷ついた恋は一瞬友は永遠 県立世羅高等学校三年 柳原 和美
蓮池の水面に眠る蕾達朝に起こされ瞳をひらく 県立廿日市高等学校三年 宮本 大海

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
わが綻び繕うほどの蝋引糸残りておりぬ針箱の中 広島市 田中 博子
【評】針箱に残っていた蝋引糸は母の持物であり、母子の絆を示すものでもある。母を想う心情が仄々と伺われて快い。
あふれゆく噴水の傍に寄りてくる八月六日死者の足音 広島市 高野 和子
【評】水を求めてくる死者の足音には計り知れない悲しみが思われてならない。光と影、動と静の表現は巧みであり、感慨深い。
草取りを急かすごとくに蝉時雨一世短かし熱き恋せよ 三原市 山重 富子
【評】】作者は中高年であろうか。「命短かし恋せよ乙女‥」の歌詞を想い起させる。誰しも、この熱情には魅了される。上下句の照応、適切。
極寒の闇を貫く拍子木の過ぎゆく音に目覚むる我は 広島市 宍戸 元信
【評】研ぎ澄まされた感覚の作者。ふと、極寒での戦争体験をされた方かとも思われてならない。身の引き締まる作。
百歳の媼は遂にみまかりぬ一人居ながき庭のどくだみ 福山市 伊賀乃里子
【評】どくだみの漢方薬名は十薬、薬ではあるが悪臭をもつ。百歳とどくだみを対比、照応させて、媼の生涯への想いをふくらませて妙。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
沼杉の高きに止まる青鷺の視線の先に疲れたわたし 福山市 大江 文枝
髪ほどき全てをほどく月の夜はさびしさのみが我に寄り添ふ 広島市 大澤 優子
報道の小さき事実孤老死のありたる仮設住宅かせつよかげろう燃える 呉市 清野 利恵
青い傘ゆうやみに母がゆらしおりバスの窓ぬぐい両手振るとき 安芸郡海田町 上條 節子
新茶摘む赤き手甲の母の指休むことなく五月を泳ぐ 広島市 神名 順子
公園に声つつ抜けて少年らの凧風はらみ青空を舞う 大竹市 赤瀬 勝昭
今日よりはわが胸にのみ生きまさむ箸より軽き母の骨拾ふ 福山市 高田サトル
病院の待合室の鷺草に心静めて呼ばれるを待つ 三原市 中村須磨子
妻の手を取りて見上げる暗闇に山の彼方の花火を聞かむ 福山市 瀬尾 千富
ブランコを揺らし己を剥いでゆき幼きあの日の青空に入る 広島市 森本 直美
戸を繰ればきそひ飛び出す仔牛らの今朝られゆく犬ふぐりの野辺 庄原市 家島 晶子
平和通りのイルミネーションの煌めきに被爆の死者は目を覚まさむか 広島市 出原 知恵
咲きながら登りきりたる立ち葵見上げる坂道ガン検診に 呉市 藤井 雪子
ひまわりの笑顔につられ母と子の迷路を進む手と手をつなぐ 東広島市 増田マスヱ
きじ鳩のひな身をすくめにらみしと庭師は梯子静かに外す 広島市 木村 温子
みのり田の溝に杜若かきつの咲き競う災害のなきさとの静けさ 山県郡北広島町 清中 勝枝
「たり」「けり」に親しまざりし君なれば文語体にて告ぐ胸の内 安芸高田市 的場ひかり
盆客を送りて戻りし広き部屋まわり灯籠ひとり廻れり 庄原市 鳥井 幸惠
子供らの描くふるさと青山に入道雲のうごめいており 世羅郡世羅町 石原 詠子
夜まつりの天に燃え尽く夏の華いく万条の光吸う闇 呉市 岩倉香陽子