けんみん文化祭ひろしま'10文芸祭合同大会
トップページ 事業概要 けんみん文化祭ひろしま'10 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】高野和子 選

【短歌】高野和子 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
空の青仰ぎながら息をする今日も平和な八月六日 県立総合技術高等学校三年 福地 萌音
【評】今日の平和を感謝しつつ、その裏に戦争への危機感を秘めている事が読める。逆説的な手法が鮮やかに決まった。
「またくるよ」その背に何度言ったかな小さくなりゆく祖父の背中 県立総合技術高等学校一年 福原佳奈子
【評】人間愛に満ちた作品。孫と祖父とのかかわりが具体的な描写によって鮮明に浮かぶ。詩心のある作者と言えよう。
空っぽになった箱見て笑み浮かぶ明日も頑張る父の弁当 県立忠海高等学校三年 柏田 佳美
【評】作者の手作り弁当をたいらげてくれたうれしさが明日への励みとなった作。「笑み」は父と作者の両方に掛けたい。
せみのこえどんなおはなししてるかなわたしもいっしょにおはなししたい 庄原市立粟田小学校一年 わかばやしはるな
【評】小学生の作品であろうか、蝉の声をせみの会話と捉えた感覚が良い。仲間になりたい願望が実にかわいい。
学校の田植えでどろに入ったよおたまじゃくしくんおじゃましますね 広島市立美鈴ヶ丘小学校五年 三浦 七海
【評】課外授業の経験を素直に詠んだ作品。小動物への愛情が下句の四・五に表出されており、実にほほえましい。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
線の上おたまじゃくしが泳ぐたびリズムと音が旅に出て行く 庄原市立庄原中学校二年 坂口 遙香
夏祭り慣れない下駄で歩いてく君の隣でほほを染めつつ 県立可部高等学校定時制二年 桑原  聖
赤とんぼ二ひきなかよくスイスイと黄色の田んぼできょくげいしたよ 三次市立河内小学校二年 山田 美羽
変わらないしわくちゃ笑顔と対称になんだか軽い押す車いす 県立総合技術高等学校三年 城戸 友希
蓋がかたい瓶でも自力で開ける祖母私より手が小さいのにね 県立総合技術高等学校二年 末平真里南
授業中ふと見て気付く窓の外じゃれあう鳥に混ざり合いたい 県立総合技術高等学校一年 上野 莉奈
枯葉舞うどんぐりころころ転がって可愛い帽子かぶっているよ 三原市立神田東小学校六年 植村 美月
ピッチャーの交代つげるアナウンスこれで終わったあいつの夏が 県立総合技術高等学校一年 中野 未来
蜜柑むぐその手をそのままこたつの中へほんのり香る冬の訪れ 盈進中学校三年 竹縄 美月
アジサイは雨が運んだ贈り物まるで花だんの天使のように 三次市立酒河小学校六年 中島 栞奈
あさがおの葉からこぼれる水玉にきらりと映る日の光かな 県立忠海高等学校一年 金澤 知恵
手作りのせかいに1つタイすりみ魚のにおいわたしのちくわ 三原市立神田東小学校二年 福貞 千夏
盆灯籠今年は一人で組み立てた灯をつけたら絵が浮かんだよ 安芸高田市立向原中学校二年 粟森 仁志
あと少し蚊にさされながら手をのばすやっと手にしたミヤマクワガタ 県立総合技術高等学校一年 木光  渉
暑い夏空見上げると一面に積乱雲の参勤交代 県立総合技術高等学校三年 芳永 康宏
雨の日の迎えはいつも傘ひとつ梅雨の寒さと手のあたたかさ 県立総合技術高等学校三年 古谷 尚子
カキーンと響く快音白球は蝉時雨へと吸いこまれてく 三原市立宮浦中学校一年 生口 幹也
虹が出たシャワーのしぶき七色にその輪に入りはしゃぐ私 三原市立幸崎小学校三年 神田 佳澄
じいちゃんの作る野菜が献立に入ってる日は少し自慢だ 庄原市立庄原中学校一年 篠原明日香
「金賞」の知らせ届いたうれしさに「はい」の返事もつい裏返る 三原市立宮浦中学校二年 夜舩 史奈

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
君の弾く「雨垂れ」君がいない今も僕の庭を濡らしています 広島市 菅  桃子
【評】挽歌であり相聞でもある一首。君を失った悲哀を下句で象徴しており、ショパンの「雨だれ」と照応している。
月おくれ少女倶楽部を一度だけ買ってくれたり戦後に母が 庄原市 蔦 トキエ
【評】母が買ってくれた月遅れのしかもたった一度だけの本、その背景に戦後の生活が隠されており、奥行きがある。
手選りせし大根の種子二百粒芽生えしとは手話でよろこぶ 世羅郡世羅町 行田 照子
【評】大根の芽生えを手話で喜ぶ娘さんが見えるようだ。上句の具体も無駄がなく、二百粒の数字が効果をあげている。
極楽と書けば番地はいらぬらし文待つ母が夢の中 広島市 小林 孟司
【評】市町村域のない浄土へ旅立った母への思いが切々と胸を打つ。情に流れやすいテーマを知的に処理した佳品。
名月に誘われ君と散歩する影もしっかりと手を握っている 広島市 松木  宏
【評】上句はやや甘いが下句の君との関わりを深める描写により一首を確固たる作品に仕上げた手腕は見事と言える。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
けんめいに畠打つ暮し今あるを限界集落などと書かれり 三原市 大森 昭恵
過疎進む村に戻れる若夫婦の三人みたり児の服竿におどれる 呉市 河崎 典子
紫蘇の葉を摘む手にふれて飛び移るバッタは子どもしかと背負えり 府中市 萩原 愛子
ふと降りし駅のひとつか歌詠みを誘われ十年歩み来たりぬ 三原市 村上 悦子
役目終えし案山子かかしも共に焼く夕べ豆がらの炎の赤く燃えたつ 山県郡北広島町 沖野 幸子
猛暑の中コシヒカリはやも結実の穂首傾げて風にゆれおり 山県郡北広島町 清中 勝枝
一日を魚商ひ帰りゆく老婦も車も夕映えの中 三原市 古屋敷和也
通学路に立ちて学童見守りいしシベリア還りの君いま長臥す 尾道市 藤原 照子
日の暮れをつくつくぼうし来て鳴けり父に文せよ母に文せよ 呉市 平見 光子
住む人のなき荒れ庭をぬた場としししの親子が月夜に遊ぶ 広島市 中野 冨子
今朝受けし幼女の笑みを出会いたる人等に返す島は新涼 尾道市 藤田 久美
梅雨曇る庭ののうぜん花に来て蜻蛉は黒きリボンを結ぶ 福山市 松川 博行
友逝きて無人となりし峡の家臘梅の花万燈ともす 庄原市 田中 静子
顔の幅に障子を開けてただいまと今日もげんきに女の孫下校す 安芸郡府中町 蛭本美代子
はだか木となりし柿の木ひとときを雀あそばす夕焼のなか 三次市 松田 一枝
ネガティブな自分の背中押してみる昨日と違う私に会える 福山市 藤井 圭子
おおどかに欅大樹の鎮まりて今し芽吹かむ力の漲る 呉市 石田 操子
一本の新樹となりし心地せり若葉のかがやき総身に浴びて 東広島市 今田あさ子
昨夜の風に乱れ伏したる馬鈴薯の花ことごとく夕陽を仰ぐ 三原市 岡村 光里
さあとくとごらんなさいと山畑の高菜の紫昼日を返す 福山市 峠 美恵子