過疎進む村に戻れる若夫婦の三人児の服竿におどれる
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呉市
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河崎 典子
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【評】現代が抱える「過疎」という重いテーマが明るく展開していく歌。三たり児の服が竿におどる景に未来が見える。
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手選りせし大根の種子二百粒芽生えしと娘は手話でよろこぶ
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世羅郡世羅町
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行田 照子
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【評】初句から結句まで一つ一つの言葉がどれも大切な意味を持っている。二百粒の芽生えの感動は読者にも伝わってくる。
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君の弾く「雨垂れ」君がいない今も僕の庭を濡らしています
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広島市
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菅 桃子
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【評】現実の具体を払拭した下句が、幻想的な雰囲気を持つ。ショパンのピアノ曲「雨垂れ」は雨の象徴・・・。ロマンが漂う。
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籠にゐる鸚哥の知らぬ大空にスワンのやうな白き羽根雲
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安芸高田市
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小山美恵子
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【評】インコは現実、スワンは夢。この両者が融合して、上句と下句が不思議な柔らかさで響き合っている。詩的な短歌。
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水を欲り数多逝きしという河岸石座りおり祷るかたちに
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呉市
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清野 利恵
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【評】原爆投下より六十五年、詠み残すべき務めが我々にはある。置かれた石を「祷りの石」と見た作者の心の深さを思う。
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