けんみん文化祭ひろしま’09文芸祭合同大会
トップページ 事業概要 けんみん文化祭ひろしま・文芸祭合同大会 入賞・入選作品発表 【短歌】相原由美 選

【短歌】相原由美 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
じいちゃんとしろかぶのたねうえましたもうめがでたよおおきゅうなれよ 庄原市立口北小学校一年 しおんりょうすけ
【評】おじいちゃんと土いじりをしている様子がいきいきと表現されている。「おおきゅうなれよ」がとてもいいですね。
闇に散るせんこう花火一しきりぽつりと落ちた無言の深さ 比治山女子中学校三年 宮脇 紗耶
【評】せんこう花火の持つ雰囲気をよくとらえて、言葉の選び方がうまい。結句でしんとした暗さが一層感じられる。
生まれた日僕は抱かれて泣いていて母は優しく笑顔で泣いた 三次市立三次中学校三年 乙廣 隆慶
【評】生まれた時のことを想像して、その場面がありありと浮かんだのだろう。祝福されて生まれたことの幸せを詠う。
たまってく未送信メールあなたあて送れぬ自分に溜め息こぼれる 県立総合技術高等学校一年 門田 莉加
【評】青春まっただ中で悩む作者の独白がかわいい。現代的なツールを使うにもこんなためらいと迷いの部分があるのだ。
白球を追いかけ散った我が青春秘密兵器と言われ続けて 県立総合技術高等学校三年 佐藤 祐馬
【評】期待され続けながらも、思うようには成績を出せずに終わった選手生活へのくやしさが巧まずに滲んでいる。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
しつ問に答えてくれたりゅう学生ぼくの英語に自信が持てた 三原市立幸崎小学校四年 濱田 聖也
筆作りみんな違ってみんないいだが自分のが一番いいぞ 熊野町立熊野中学校一年 津村 昴希
「がんばりい」ふと聞こえたその声で空見上げると笑顔の祖父がいる 呉市立仁方中学校二年 今川 愛梨
広島の風景見わたし生きてきた歴史刻んだ原爆ドーム 県立総合技術高等学校一年 井村 実咲
三輪車こいではこけてこけてこぎ今の妹昔の私 安芸高田市立吉田中学校二年 村川 陽子
青々と茂る緑をかけぬける春一番よ獣のごとく 盈進中学校二年 古屋 映実
のりを取る筆先糸巻き仕上げ作業毛を焼く匂いがいまだに残る 熊野町立熊野中学校一年 小谷 雅幸
いつの間に二歳になってイタズラを物を投げたり隠したりする 県立可部高等学校定時制四年 平井  愛
試合中交代の笛鳴り響く私ではなく後輩が出る 三原市立宮浦中学校三年 米村友香子
宿題を終えろ終えろとセミまでが母のまねして我せきたてる 三原市立宮浦中学校三年 桑原 昌大
うがいはねがらがらぺを三回だばいきんさんとはいさよなら 竹原市立荘野小学校三年 大垣  翔
テンションが上がるそのわけ先輩に勝って私はピノキオになる 盈進中学校二年 高橋 真由
家の中だれかいそうな気がするよなんだか怖い留守番のとき 廿日市市立大野東小学校六年 白水  優
広島は日本だけじゃないんだよカタカナにすれば世界のヒロシマ 県立総合技術高等学校一年 吉田 沙智
ひと月に二度か三度は居なくなるうちのリモコン放浪癖あり 県立総合技術高等学校二年 日谷 優希
原爆の記憶薄れる今現代語り継ぐのは三世の私 県立総合技術高等学校二年 太田 智子
ロスタイム試合終了迫ってる三年間を二分にかける 三原市立宮浦中学校三年 飯盛 一輝
ごみすてでにおいがついたぼくの手は魚ややさいがまざったにおい 竹原市立荘野小学校三年 平岡 龍斗
リビングで本を読んでる横からねすっとすずしい秋のともだち 三次市立八次小学校六年 二岡 優菜
仁方中のあせたゼッケンしょって立ち深く礼する最後の畳 呉市立仁方中学校三年 長島 朝子

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
麻痺の手で名を書くけい古五度六度 投票へ行くサルビアの道 呉市 島崎芙美子
【評】五度六度という具体に実感があり、一字あけで場面転換して投票へ行く道、サルビアの鮮やかさを感じさせる。
字を覚えしをさな児ゆっくり目でなぞり「ちちをかへせ・・」の碑を読み上げる 広島市 村上 光江
【評】峠三吉の詩碑の前で幼子がたどたどと詩の一節を読みあげる。その切り取り方がいい。平和への思いが通じる。
青空に自転車のタイヤの跡のこし父はときどきわが家をのぞく 海田町 上條 節子
【評】飛行機雲のひと筋の白さから湧く父への思い。見守っていてほしいという願いがこういう表現の一首になった。
街をゆく風と別れて降り来れば地下には別の風が住みゐる 三次市 佐藤 昌樹
【評】まるで風を人間のようにとらえて、都会の暮らしのなかで感じる違和感のようなものの表白に成功している。
母の背のリュックに負はれ釜山より還りきしとう終戦の秋 三原市 村上佐登子
【評】幼い日の引き揚げの体験を、リュックの中に負われてという事実を述べることによって時代の証言者となっている。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
傘借りて返せぬままに梅雨の明け初生りの茄子添えて持ちゆく 広島市 長尾 裕子
一杯の熱きコーヒー吾子は飲み手術室に消ゆ執刀医として 福山市 佐野 照子
「いいじゃないダメでもともと」背を叩き着なれぬスーツ送り出す朝 広島市 岡田 郁枝
退きし会社の角を曲がるとき今日も目をやる二階のあかり 東広島市 土居 聖水
兄征きし前夜の青き蚊張の中父の煙管は夜半まで蛍火 広島市 出口 政春
陣痛のわれを乗せたるリヤカーを牽きて急ぎし父思いいず 尾道市 藤原 照子
封印をしてきし記憶呼び覚まし君は描きし被爆の絵本 広島市 出原 知恵
人住める家かと紛ふ灯明かりに終夜餌を食む養鶏団地 福山市 金藤 克美
ねじ花の花序を上まで昇りつめ何を思うや一匹の蟻 庄原市 橘  京子
家朽ちて楪の猶生き生きと誰か興せと天を突きをり 福山市 大江 文枝
愛想よき豆腐屋住みしこの辺り何やら商事管理地なりと 呉市 平見 光子
新緑の萌えいずる山のひとところ春のしずくの山桜見ゆ 東広島市 能島 浩子
紅葉の盛りを見たきに早々と枝を剪られて骨の街路樹 呉市 草野 綾子
誰がつけし「便利橋」とう橋ひとつ畑より渡れば店数多あり 広島市 松井 公子
老人力の涌かざる今日は農休日地下足袋洗う手に陽のあそぶ 尾道市 藤田 久美
菜園にラジオ講座響かせてくの字に曲がったキューカンバーとる 呉市 高井 則男
購いしバナナの産地はフィリピン昭和の戦に義父逝きし国 北広島町 桑木 倫恵
透明な花瓶は備に生花のモッコクに出る根の様映す 福山市 峠 美恵子
鬱の字の中の木姥目樫なればうつの木みしみし庭をはみ出す 広島市 田部 紀子
背をさかれ枕並べし何百のウナギに産地聞くべくもなし 三原市 竹内 鏡子