現代美術家 野田正明さんが絵画指導

2023.10.31 アーティスト

福山市新市町出身で、ニューヨーク在住の現代美術家 野田正明さんが10月19日、福山市立手城小学校(福山市南手城町、和田亘校長)を訪れ、6年生を対象に絵画制作を指導した。
野田さんは児童に「どんなことをしてもいい。授業で習うような型にはまらず、自由に描いてほしい」と呼び掛けた。児童は好きな色の絵の具を重ねたり、キャップ、泡だて器、スプーン、ローラーなどを使い、思い思い自由な発想で何枚も作品を仕上げた。
完成後、野田さんは一人一人の作品に目を通し「うまい下手は関係ない。自分自身が楽しんで描くことが大切」と講評した。
今回の指導は、野田さんも所属している、教育機関等に本物の文化・芸術を提供することを目的とした「文化力を繋ぐ会」(皿田雄三会長)の活動の一環として行った。

HP:野田正明

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今回の授業に対して、メッセージをいただきました。
〇現代美術家 野田正明様
「生徒対象の自由絵画授業は20年超に渡って続けています(講演を含め、ニューヨーク、ワシントン、中国、ギリシャ、台湾 日本各都市)。大阪芸大卒業後渡米までの5年間は大阪の大和幼稚園で、300人を対象に絵画教師をしていたことがベースになっています。この授業は児童ではなく、高学年であることが重要です。中学、高校、大学でもかまいません。本当は父兄の参加は、先生も含め重要なことなのです。
 30人以上のクラス内で絵が好き、得意な生徒は1%も満たないので、授業はむしろ残りの生徒のためのものです。うまい下手は関係なく、自由に泥遊びや、ゴミのような絵を描くことで心を開放すること。規制の中で、学び、習得、教えられることに慣れた高学年の生徒が、本当の自由を与えられた時、放心状態から葛藤が始まり、おずおずと手をうごかし、何枚か描いていくうちに、覚醒していきます。絵に、自己に没入していくことで何かが生まれ、7、8枚書いても同じ絵はありません。無意識かの出来事で、生徒は何をしたのかわからないので、私が書いた順番に全てを説明していきます。
 この評価、説明の時間がこの授業の肝です。生徒は前に立たされ、絵をみんなに見てもらいます。この瞬間はある生徒にとっては緊張の時です。そのなかでの、啓発的評価は生徒に自己肯定を心から起こします。お恥評価はしない、全てを論理的に異なる言葉で褒める。全ての生徒がワクワクするための授業です。中には、メンタル的に問題児もいますが、その子たちを置き去りにしたら、失意、トラウマとしてのこり2度と絵筆を持たなくなります。幸いこれまでそうした生徒も皆と同じように描き、評価をしてきました。
 仕上げは、気に入った絵にタイトルをつけ、感想文を書くこと、無意識下の絵画制作は私の説明によって、何かを感じ自身に気づきをもたらしたことを、文として反芻することで、何をしたのか考え、記憶に留めることができます。感想文を読むことで、私も生徒がどのように受け止めたのか確認でき、次へ役立てることができます。
 この授業はカリスマのあるものがやることで、生徒にこの一瞬を得難い体験として懸命に向かうことから成り立っています。初め生徒が自由の中で放心状態であることは、その証です。緊張と開放、心を解き放つとはどういうことか、教えることなく、個々が自力で見つけていくこと、それをしっかり受け止め、後押しをすることが私の役目です。
 数年後授業を受けた生徒、親御さんに会うことがあり、あの日から子供が変わったということを幾人か聞くことがありました。」

〇文化力を繋ぐ会会長 皿田雄三様
「子供達が本物の文化・芸術に触れ、歓びや感動を心に受け止め、未来に向かって、力強く一歩を踏み出してもらいたいです」

〇福山市立手城小学校校長 和田亘様
「この度の野田 正明先生による本校への出前授業では,児童に『自分もできるんだ』『自分らしくでいいんだ』という自己肯定感を高めていただきました。コロナ禍で先行き不透明だった3年間を経て,改めて『本物にふれる』『心を開放する』ことが学んだと思います。児童は人とのふれあいの中で育つと思います。それが学校が存続する意義だと思います。今回の授業では野田先生とのふれ合いと肯定的評価で児童にとってとても有意義な時間でした心から感謝いたします。」