賀茂鶴酒造株式会社

2024.02.20 企業等

訪問記「会いに行ってもいいですか」連載中(賀茂鶴ホームページにて)

 公益財団法人ひろしま文化振興財団では、財団の活動に対し、ご理解とご協力をいただけるよう会員制度「ひろしまメセナ会」をつくり、広く皆様のお力添えを求めております。
 会費は、文化活動団体への助成や広島文化賞の贈呈などの継続事業や、県民や企業が求める芸術文化の普及と向上に向けた事業の財源として活用いたします。
 今回、「ひろしまメセナ会」に入会いただき、当財団を応援していただいている企業の皆様をご紹介するズームアップシリーズを始めました。第1弾は、賀茂鶴酒造株式会社様(東広島市)です。


酒蔵・1号蔵を見学室直売所としてリニューアルオープン

 「日本酒離れ」が言われて久しくなります。東広島市西条での「酒まつり」などお酒のイベントは盛況ですが、残念ながら日々の暮らしでは日本酒はその存在が薄くなりました。広島も例外ではありません。業界紙によれば、広島市はワイン、ビール、発泡酒の消費では全国の都市のベストテンに入りますが日本酒は圏外。日本酒は選ばれていないのです。
 去年2023年に創業150年を迎えたのを機に、賀茂鶴ホームページに訪問記「会いに行ってもいいですか」の掲載を始めました。飲食店のみならず、日本酒を中心に据えた各分野の職人さんたち現場の方から賀茂鶴がどのように信頼されてきたのか。他者の鏡に映る賀茂鶴の姿を通して、改めてお客様にアピールしていきます。同時に、このことは、父・石井泰行前会長・元社長や祖父・石井武元会長の時代の記憶を社外の方から教えてもらう私自身の歴史の再発見でもあります。
 ただ、日本酒の普段飲みが減っても旅先でその土地の料理や酒に手を伸ばす人はいます。そこで賀茂鶴の酒造りを理解していただく。観光は「次の一杯」につなげるチャンスです。
 2019年10月、1号蔵を見学室直売所としてリニューアルオープンしました。この1号蔵は2023年10月に文化審議会からの文科大臣への答申で西条酒蔵群のひとつとして国史跡に指定される運びとなりました。酒蔵群が国史跡となるのは全国でも初めてです。
賀茂鶴レストラン「佛蘭西屋」では日本酒に合う料理のペアリングを行っています。東広島市にある独立行政法人「酒類総合研究所」から講師をお招きした「チーズと日本酒の会」も開催。ワインとは異なる日本酒とチーズの合わせ方や、大吟醸「特製ゴールド賀茂鶴」とチーズが合うことなどを発信しています。インバウンドも意識して佛蘭西屋ではこの4月からビーガンメニューもスタートします。
 毎月1回の杜氏による酒蔵案内に加えて、JAL、東広島DMOと連携して年3回の「酒蔵体験ツアー」を造成。酒米の田植えや刈り入れ、醸造体験に加え、インバウンド向けの和文化体験メニューも用意しました。
 今年2024年11月を目指して伝統的酒づくりをユネスコ無形文化遺産に登録しようと文化庁が後押しする動きもあります。2022年夏、賀茂鶴では社員が大阪の製桶所に泊まり込みで修行し酒を仕込む木桶を製作しました。蔵付き酵母での生酛仕込みという伝統的製法で木桶という伝統的な道具を使って仕込むことを目指しています。
 そして日本酒離れが指摘される若い方々向けに、日本酒の基礎知識やマナーのご紹介、オリジナルラベルでのとっておきのボトル作り、そして「一杯目の日本酒」を華やかな香りの大吟醸酒で飾る「お酒の成人式」も続けています。社会に旅立つ若者の心においしい日本酒との出会いの記憶が刻まれるよう、これからも日本酒文化を支えていきます。

                                            賀茂鶴酒造株式会社 代表取締役社長                    
                                                       石井 裕一郎


「チーズと日本酒の会」


酒蔵体験ツアー(酒米の刈り入れ)