「広島文化賞」受賞者紹介シリーズ第1回 奥山民枝さん

2019.03.05 アーティスト

広島文化賞贈呈式にて表彰される奥山さん

「広島文化賞」受賞者紹介シリーズ 第1回目は、
第31回 広島文化賞を受賞された、尾道市在住の画家(油彩画) 奥山民枝さんです。


2011年受賞当時のインタビュー内容をご紹介します。



――:まずは、広島文化賞受賞の感想をお聞かせください。

 受賞のお知らせを頂いた時は大変驚きました。私がこの賞にふさわしいかどうか考えなければ、とても大きな喜びに包まれます。
 尾道に住まいを移して6年、このような嬉しい形で認知されたという喜びです。「広島文化」のふところの深さとあたたかさが胸に沁みます。心から感謝し、この受賞にふさわしい仕事をめざして努力していきたいと思います。ありがとうございます。


作品 「青い気流」

――:世界を旅されているそうですが、印象深い旅や創作活動に繋がるような出会いがありましたら教えて下さい。

 中学生の時の東北旅行から始まって、大学生までは国内を旅して回り、大学を出てからはスペイン留学をきっかけに、自分の生まれた星はどんな星で、人間はそこでどう生きているのかという素朴な好奇心で世界各地を歩きました。
 旅が私の表現活動に影響を与えているのは確かですが、基本的に、旅先の感動や驚きが自分の制作に繋がるには少し時間がかかります。時間のふるいにかけて残るものが自分の中でしっかり熟成して発酵するのを待ちます。


作品 「陽気」

――:沢山の国を見てこられたからこそ感じる日本、そして広島、尾道の良さとはどんな点でしょうか。

 50ヶ国程 旅をしてきましたが、今住んでいる久山田という山里は特筆すべき土地だと思っています。尾道の町から北西に山を 登ったところにあり、深々と緑に抱かれた水源池が美しい盆地状の山里です。家から5分のひっそりとした溜池には青鷺(あおさぎ)の巣があり、カワセミもやってきます。
 久山田を歩くと、旅ではないのに旅をしているような感覚・・・親密な世界と未知の世界が、ここで交錯しているような感覚に落ち入ることがあります。この山里がそのまま曼荼羅の相(すがた)をそなえているのではと思い至り、心は幸福なのにハラハラと涙がこぼれた経験もあります。それが私の白日夢にすぎないとしても、そういう幻を喚起する土地であるということが、私にとっては重要な事です。
こうした感覚は、より広い表現世界に私の制作を解き放つ契機になるからです。



――:最後に、今後はどのようなことに力を入れていきたいとお考えですか?
 
 見えない感動を見える世界にどう変換して表現するか。この難題をどうにか良いかたちで解決したいと考えています。そしてそれを広島の、尾道の、久山田の、暮らしの情趣とつなげる事ができたら嬉しいです。


ありがとうございました。
ますますのご活躍をお祈りいたしております。

※この記事は、ブンカッキーネットひろしま ひろしま文化・芸術情報ネットにて2011年1月15日に公開されました。
 インタビューの内容は取材当時のものです。


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